『女性にとっての職業――エッセイ集 【新装版】』(みすず書房)
森 まゆみ
そうした女たちの長い列に連なる一人としての意識からである。職業作家で
あろうとなろうと、自分の言葉で自分を語る行為が女にとってどれほど強靱な
精神のいとなみであるかを、ウルフは身をもって体験していたのだ。女がもの
を書こうとするなら、目の前に立ちはだかる〈家庭の天使〉の幻と命がけで闘わ
なければならないことも、『男が自分たちの感情を言いあらわすために作った
言葉』で自分の感情や自分がいま生きている世界を表現しなければならない
女のディレンマも、ペンをもつ先達の女たちとウルフが分かちあう共通体験なので
ある。女がものを書くことの意味とそれに伴うさまざまな問題を、言葉を変え、
ところを変えて語るウルフのエッセイからは、ペンをもつ女のいとなみが一つの
連続体として浮かび上がってこよう」(監訳者あとがき)
女性の知性・余暇から婦人協同組合まで、ドロシー・オズボーン、メアリ・ウルストン
クラフトからブロンテ姉妹、オリーヴ・シュライナー、キャサリン・マンスフィールドへ。
「語るべき自己」をもった女性たちを対象にした26篇のエッセイを集成し、ものを書く
女たちの内面と歴史を照射した貴重な一冊。
[1994年7月初版発行]
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