がんは裏切る細胞である――進化生物学から治療戦略へ / アシーナ・アクティピス
がんは裏切る細胞である――進化生物学から治療戦略へ
  • 著者:アシーナ・アクティピス
  • 翻訳:梶山 あゆみ
  • 出版社:みすず書房
  • 装丁:単行本(312ページ)
  • 発売日:2021-12-14
  • ISBN-10:4622090600
  • ISBN-13:978-4622090601
内容紹介:
■「がんは進化のプロセスそのものである」。無軌道に見えていたがん細胞のふるまいも、進化という観点から見れば理に適っている。がんの根絶をしゃにむに目指すのではない、がん細胞を「手なず… もっと読む
■「がんは進化のプロセスそのものである」。無軌道に見えていたがん細胞のふるまいも、進化という観点から見れば理に適っている。がんの根絶をしゃにむに目指すのではない、がん細胞を「手なずける」という新しいパラダイムについて、進化生物学は原理的な理解をもたらしてくれる。
■著者は、この新しい領域を開拓する研究者の一人。進化の視点の基本から説き起こし、協力し合う細胞共同体としての身体の動態や、その中で《裏切り》の生存戦略を選び取るがん細胞の生態を浮かび上がらせる。身体にとって、がん細胞の抑制はつねに大事なものとのトレードオフだ。そんな利害のせめぎあいを分析することにたけた進化生物学の視点から、がんの発生や進展を、あるいは遺伝子ネットワークや免疫系との関係を見直せば、たくさんのフレッシュな知見と問いが湧いてくる。そして最後に話題は新たな角度からの治療へと及ぶ。
■がんの発生は、サボテンからヒトまで、ほとんどの多細胞生物に見られるきわめて根源的な現象だ。細胞生物学、腫瘍学から臨床にわたる、様々な個別の分野で蓄積されてきたがんの理解全体に対して、進化生物学はそれらをより基盤的なレベルで支える観点を提供していくことになるだろう。その本質に触れて、学べる一冊だ。

《がんの治療や多細胞生物としての私たち自身の理解に関して、この本が示唆するものはとてつもなく大きい。》──デイヴィッド・クォメン

《本書はがんや、生命そのものへのわれわれの見方を変えるだろう。》──ダニエル・E・リバーマン

《がんやその制御の真の理解のために、まず読むべき一冊。》──デイヴィッド・ スローン・ウィルソン


【目次】
1 はじめに──がん、それは形を得た進化そのもの

2 がんはなぜ進化するのか
がん細胞は体内でどのように進化するか
がんの視点で考える

3 細胞同士の協力を裏切る
がんとは何か
協力が進化するという不思議
多細胞の体は協力を具現化したもの
裏切る細胞を見つけ出す
細胞の情報活動

4 がんは胎内から墓場まで
混沌の地獄vs.停滞の沼
あなたの母親と父親はあなたの体の中で攻防を繰り広げている
ミルクセーキと一夫一婦制
細胞版「若返りの泉」
時はあらゆる傷を癒す── ただし、速く癒しすぎるのは考え物
体細胞進化で感染症と闘う
生殖能力ががんをはらむ
ところ変わればがんリスク遺伝子も変わる
栄養膜の浸潤
私たちはひとり残らず前がん性の腫瘍と共に生きている
現代特有の環境要因とがんリスク

5 がんはあらゆる多細胞生物に
生命全体で見られるがん
細胞数が多いほどがんも多い?
生活史に基づく決断
調節され、制御されている
イヌと悪魔
感染性がんはヒトには(ほぼ)起こらない

6 がん細胞の知られざる生活
腫瘍微小環境のつくり方
破滅した生態系を逃れる
協力革命
メタ個体群と転移
副産物? 偶然? 協力の理由をめぐるそのほかの説明
微生物による仲介
クローン増殖ががんを止める場合もある
がんの進化における利己的な遺伝子

7 がんをいかにコントロールするか
炎からよみがえる不死鳥
遅らせる
薬のふりをする
酸性度を下げる
腫瘍に資源を与える
がんのコントロールに協力理論を活用する
協力を妨害する
コントロールを通した治癒

謝辞

訳者あとがき
参考文献
原注
索引

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