『パリ日記―特派員が見た現代史記録1990-2021 第5巻 オランド、マクロンの時代 2011.10-2021.5』(藤原書店)
鹿島 茂
「オランドの時代」はまた、内政面での大きな変革の予兆の時代でもあった。フランスの「第五共和制(1958年制定)」の後半を特色付けた、左右の二大政党が拮抗した時代の終焉である。
「マクロンの時代(2017年5月~)」の最大の「事件」はエマニュエル・マクロン自身だ。数年前までまったく無名だった39歳の若き政治家が、いきなり、国連安保理常任理事国であり、核保有国である“大国フランス”の大統領に就任した出来事を、「事件」と言わずに何と言おう。平時には、「欧州」の大国は経済基盤の堅固なドイツだった。しかし、暗雲が欧州大陸を覆う戦時となると、平時には見過ごされていた“大国フランス”の出番だ。
ウクライナのゼレンスキー大統領が何かとマクロンに電話して、頼りにするのは、フランスが国連安保理常任理事国であると同時に核保有国だからだ。イラク戦争をはじめ、数々の紛争を体験し、「拒否権」を持つ常任理事国の役割と国連決議の重要性を知るヨーロピアンなら、ゼレンスキーのこの態度を理解できるはずだ。
(「はじめに」より)
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