コラム
鹿島 茂「2023年 この3冊」毎日新聞|<1>山口昌子『パリ日記―特派員が見た現代史記録1990-2021 第5巻 オランド、マクロンの時代 2011.10-2021.5』(藤原書店)、<2>阿部卓也『杉浦康平と写植の時代』(慶應義塾大学出版会)、<3>ティモシー・ワインガード『蚊が歴史をつくった 世界史で暗躍する人類最大の敵』(青土社)
2023年「この3冊」
<1>山口昌子『パリ日記―特派員が見た現代史記録1990-2021 第5巻 オランド、マクロンの時代 2011.10-2021.5』(藤原書店)
<2>阿部卓也『杉浦康平と写植の時代』(慶應義塾大学出版会)
<3>ティモシー・ワインガード『蚊が歴史をつくった 世界史で暗躍する人類最大の敵』(青土社)
<1>は全五巻の『パリ日記』の最終巻。冷戦以後、産経新聞パリ支局長としてヨーロッパを取材してきた著者の備忘録代わりの日記が1―4巻を成す。最終巻は退任後にフリーランサーとして取材したものをテロ、移民、EUなどのテーマ別に編集した本。本書を参照せずにフランス現代史を語ることは不可能になった。<2>はカタカナのレイアウトに苦労したデザイナー杉浦康平が日本独自に発達した写植という複製技法と出会うことによって起こった印刷革命をその終焉(しゅうえん)まで追跡した研究書。ストーリーテリングの巧みさが際立つ。
<3>世界史はある意味、戦争の歴史だが、その戦争の帰趨(きすう)を決定づけたのは耐性をもたない侵入者に襲いかかった蚊だったという結論が衝撃的。人類の未来も蚊との勝負にかかっている。
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