「大学改革」のかけ声ばかりが先行し、学問や教育が痩せ細るなか、大学への信頼はどのように取り戻せばいいか。その問いへつながる道筋に、近現代日本文学の研究者が、「大学人」として発信しつづけた言葉を配置する。
日本の大学行政の問題点をもっともチープなかたちで照らし出すにいたった、元理事や前理事長の逮捕・起訴といった、いわゆる日大事件。日本大学アメリカン・フットボール部の危険タックル事件。それらの渦中にいた著者が、できるかぎり事実をたがえることのないよう、メモと記憶にしたがって書き下ろした第1部「大学の現在、そして危機のなかの日常」。圧巻の93,000字。大学人はもとより、組織にいる人間には必読のテキストである。
第二部は、コロナ禍に遭遇した最初の半年間に出し続けた「学部長通信」を主に、第三部は、学生・保護者・卒業生に語った文章を収録。これらは教職員のみならず学生・保護者、卒業生にどのように事態を報告し、安心を与えられるか、考え抜かれた言葉である。「言葉なくして、安心も共感も説得もない。苦しいなかで言葉を届ける。それだけを考えて、メッセージを書き続けた」。
大学を取り巻く社会で、学問への敬意が希薄になったいま、「新自由主義」によってもたらされた過剰な市場原理主義が大学を席巻するいま、全教育関係者にとっての必読書。
【教職員のみならず学生・保護者、卒業生にどのように事態を報告し、安心を与えられるか。学部長の言葉など、果たして相手に通じるかどうか。これまで校長先生の訓示や報告に共感したことはないものの、しかし、言葉なくして、安心も共感も説得もない。苦しいなかで言葉を届ける。それだけを考えて、メッセージを書き続けた。本書は、その三年間に書きつけた言葉と、ふりかえって総括した言葉によって出来上がっている。】……はじめにより
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