文字遊戯に心酔し、作品を創り、知的コミュニティを結成し、燈謎というものの価値を世間に大いに喧伝しようとした人々の思いとは。
漢字語彙の多義性を利用し、違う意味に読み替えていく、または、本来の語彙・文字を分解・変形させるなど、多様な技巧が含まれる、燈謎(とうめい)。長い間、性質と輪郭が曖昧な、文学と民俗のはざまにさまようコウモリのようなものになってしまっている、燈謎。本書は、透明にされがちな燈謎の作り手に光をあて、中国の燈謎文化史の欠けたピースを補うものである。
燈謎という漢字文化圏文字遊戯の七世紀にわたる変遷から、漢字文化の根底に潜んでいるエネルギーをダイナミックに描き出した書。附章「平城宮跡出土組み合わせ文字の水脈をたどる」では、遊戯的表現が誕生するきっかけになりうる様態を確認、検討することにより、民間信仰の深層に潜り込んだ文字遊戯からその背後に広がる豊かな文化世界への糸口として捉えようとする野心的な研究。中国文化文学のみならず、漢字文化圏の研究者必携の書です。
【本書は燈謎についてはっきりとした定義を提供することを目的としているわけではない。やや弁解じみた言い方をすると、本書は、研究対象の定義のしにくさを出発点としている。明白な定義を下しにくい現状を作り出したのは何なのか、それをめぐって先人たちはどのような葛藤を抱えてきたのかを考察したものである。ゆえに、本書は燈謎そのものに対する研究というより、そのような文字遊戯に心酔し、作品を創り、燈謎で知的コミュニティを結成し、燈謎というものの価値を世間に大いに喧伝しようとする人々の思いを描こうとするものである。】……序章より。
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