書評
松原 隆一郎「2025年 この3冊」毎日新聞|<1>河野 龍太郎『日本経済の死角』(筑摩書房) <2>大西 康之『修羅場の王』(ダイヤモンド社) <3>渡辺 利夫『大いなるナショナリスト 福澤諭吉』(藤原書店)
2025年「この3冊」
<1>河野 龍太郎『日本経済の死角』(筑摩書房)
<2>大西 康之『修羅場の王』(ダイヤモンド社)
<3>渡辺 利夫『大いなるナショナリスト 福澤諭吉』(藤原書店)
<1>は日本で長期にわたり不況が続いた理由として、企業が過剰に貯蓄し設備に投資しないことを挙げる。実質賃金は上がっていないが日本の生産性は上がっているという矛盾に注目し、「収奪」の内実を明るみに出す。
<2>は債権者・債務者を含むすべてのステークホルダーに粘り強く納得を求め、「法的整理の鬼」と呼ばれる倒産弁護士によるJAL倒産劇を追う。「失敗したらケジメつけてやり直すのが健全な資本主義」なのだとすれば、倒産を先送りする悲観主義が投資に対する悲観の原因とも言える。
<3>は、国家の独立を守る精神の根源を武家社会の士風、士魂に求めたのが福澤諭吉だったとする斬新な福澤論。武士階級を無情に切り捨てた日本が帝国主義者の側に立つ道を選んだのも、排除される側への共感を失ったからなのか。
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