著者は気鋭の宇宙論学者(コスモロジスト)。なぜ宇宙はこんなふうか、銀河はどうできたか、コンピュータでシミュレーションして研究。その楽屋裏に案内してくれる。
最初は天気予報。大気を箱に区切ってデータを貼り付け、ぐるぐる計算すると明日の天気がわかる。
同じことを宇宙でやってみる。用意する箱は二百億個、データは百兆ビットだ。それを計算して観測結果と照合する。銀河の渦巻きがばらけないのは中心にブラックホールがあるからだとか、銀河の集まる場所が偏っているのは星間ガスに濃淡があるせいだとか、わかってくる。
最新成果の紹介に加え、大勢の学者が宇宙の常識に挑戦してきた苦闘のあとを、歴史物語のように追体験できるのも本書の醍醐味である。
宇宙の謎はまだ多い。計算によると、目に視える星よりダークマターやダークエネルギーのほうがずっと量が多い。でもその正体は不明だ。重力の理論も未完成だし、ブラックホールの特異点の扱いもやっかいである。謎だらけの宇宙の秘密を垣間見させてくれる興奮の一冊だ。