『わが父波郷』(白水社)
辻井 喬
昭和44年11月21日、「昭和の俳聖」といわれた波郷の死亡記事が新聞に掲載された。締めくくりは「水原秋桜子に師事、俳誌『鶴』主宰。昭和44年3月、芸術選奨文部大臣賞受賞」──。駆け出しの新聞記者だった著者が、病院から電話送稿したものだった。
父の死亡記事を息子が書くという不思議な運命を背負いながら、本書はこの簡潔な略歴の奥に潜む人生の襞を、「今生は病む生なりき鳥頭」から「雪降れり時間の束の降るごとく」に至るまで、代表的な八句に託して丹念にたどった力作である。
第二次世界大戦と不治の病という二つの苦難を背負いながら新しい俳句への情熱を抱き続けていた父の真の姿が、肉親ならではの観察眼と筆さばきで、くっきりと、鮮やかに浮かび上がってくる。
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