なぜ戦後、絶対平和の立場を貫いたのか!?
「エタイの知れぬ怪物」と評された下中の生涯に迫る!
平凡社の創業、日本初の本格的百科事典の刊行、大正期の労働運動や、
啓明会、池袋児童の村小学校での自由教育運動、アジア主義、
世界連邦運動、絶対平和主義……。
数々の団体・運動を主宰し、日本の近現代史をめまぐるしく駆け抜けた下中は、
時に「遊動円木」と揶揄されるほど、右派/左派に激しくぶれ、
思想的一貫性のない日和見主義と考えられてきた。
しかし、いままで語られることのなかった下中の「一貫性」にこそ、
現代の日本にも通じる危うさが含まれているのではないか。
超国家主義と平和主義が連続してつながる「ユートピア的楽土の追求」という地平を、
下中の生涯を通じて描き出す。
「私が描きたいのは、多くの人たちが捉え損なってきた下中の一貫性である。彼を右派/左派という枠組みで捉えようとすると、必ず彼はそこから零れ落ちてしまう。結果、「無理論」で「ゴッチャ」な人物という評価が与えられてしまう。問題は下中にあるのではなく、下中を分析する枠組みにある。
下中は膨大な量の論考を発表し、数々の団体を組織している。その全体像を把握するだけでも、途方もない作業が必要になる。しかし、困難や労力を引き受けてでも、下中の生涯を明らかにすることには意味がある。彼の人生から普遍的な課題を抽出することが、本書の目的である。平凡社創業者の偉人伝や成功譚を書くつもりはない。(略)
本書は私にとって、下中彌三郎との闘いの軌跡である。下中の危うさを乗り越えることは、私の思想課題に直結する。(略)その作業は、不安定で見通しのきかない時代に生きる我々にとって、必要不可欠のものである。」(「はじめに」より)
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