『川瀬巴水探索: 無名なる風景の痕跡をさがす』(文学通信)
染谷 智幸
明治・大正・昭和の日本全国を旅して優れた風景画を手掛け、「旅情詩人」との高い評価を得ました。無類の旅好きの巴水は、「無名の、市井の、誰も注目しないような「ふとした景色」に無限の同情を寄せて(林望)」いました。
本書は、巴水の絵を持って、その描かれた場所(茨城や東京その他)を探索したものです。さまざまな発見が紹介されますが、言えることは、巴水の風景画は、その土地に立ってみなければ分からないことがたくさんあるということでした。巴水作品を地元から掘り起こすというのは、はじめての試みといってよいと思います。
巴水が亡くなってから六十五年。まだその風景の痕跡は残っています。巴水の見た世界やその当時の息吹、そして巴水の思いが次々と立ち上がってきます。結果、より深く巴水の絵を知ることができるようになります。
一体どこでこの絵を描いたのか? 茨城を中心に、東京、小樽を旅した、旅と探索の報告書です。推理小説的でもあり、読み物として面白い。またさまざまな発見のためのノウハウも満載。皆さんも、本書を片手に、ぜひ探索の旅に出掛けませんか。
推薦・林望(作家・書誌学者)「無名なる風景を逐一特定しつつあるのは、非常に大きな業績である」。
執筆は、林望(推薦文)、鈴木昇、染谷智幸、五十嵐俊之、柏原民代、加藤瑤子、小岩美帆、助川桂子、根本敬三、平山順子、深澤文子。初公開の関東大震災後の巴水東京スケッチもあります。フルカラーでお届けします。
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