『中上健次集〈8〉紀伊物語、火まつり』(インスクリプト)
野谷 文昭
『日輪の翼』は「路地」の再開発によって、居住地を追われたオバたちが若衆らの改造した大型冷凍トレーラーの荷台に乗せられ、伊勢神宮を皮切りに北は出羽三山、恐山まで聖地巡礼を行いながら、最終目的地である皇居で清掃奉仕に従事する展開。だがどうしたことか、オバらはそこで忽然と姿を消すのだ……。一方、『かなかぬち』は、一九九六年和歌山県の本宮大社旧社地など数カ所で実演された野外劇の脚本。楠木正成と噂される盗賊の首領で、全身が鉄の肌に変身する「かなかぬち」を、父の仇として追跡する姉・弟の物語。この仇に寄り添う女が、略奪された彼らの母であることが判明し、ドラマは大がかりな悲劇の様相を呈する。
特別寄稿として、長女・紀の回想録「家族の道端」(6)、現代作家が語る「中上文学の神髄を語る」(3)青山真治を掲載。
付録:生原稿や原作映画シナリオの他、『日輪の翼』創作ノート等を収録した「特別資料」(5)、お燈まつりや舞台「かなかぬち」でスナップ写真からなる「中上健次 写真館(4)」を収録。
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