【イベントレポート】祝!世界遺産登録!土偶はサトイモ?竹倉 史人 × 鹿島 茂、竹倉 史人『土偶を読む』を読む

  • 2021/08/03

2021年7月の月刊ALLREVIEWS、ノンフィクション部門は竹倉史人『土偶を読む』です。東北・北海道の縄文遺跡が世界遺産に登録されたことで、一般の人にも縄文時代の関心が高まっている中、土偶は食用植物を形どっているという大胆な説を書いた本書もベストセラーになっています。
吉本隆明を読み直している鹿島さん、竹倉さんの土偶の解釈にも興味津々、早速「週刊文春」(2021年7月29日号)の「私の読書日記」で本書を取り上げました。

※対談は2021年7月26日に行われました。
※対談はアーカイブ視聴が可能です。

土偶を読む――130年間解かれなかった縄文神話の謎 / 竹倉 史人
土偶を読む――130年間解かれなかった縄文神話の謎
  • 著者:竹倉 史人
  • 出版社:晶文社
  • 装丁:単行本(338ページ)
  • 発売日:2021-04-24
  • ISBN-10:479497261X
  • ISBN-13:978-4794972613
内容紹介:
日本考古学史上最大の謎の一つを解き明かす驚愕の最新研究。土偶とは「日本最古の神話」が刻み込まれた植物+貝の精霊像であった!

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。


縄文時代は植物と人間の違いが認識されていなかった⁈

鹿島さんは吉本隆明の『共同幻想論』を読み直す中で、古代には植物と人間の再生産の差異が認識されていなかったという仮説に注目しています。植物と人間の区別がなく、植物の豊饒(実が大きくなっていくこと)と人間が妊娠しお腹が大きくなることが同一視されていたのではという仮説です。

竹倉さんも、古代人が植物と動物というものを区別していなかったという説をとります。フレイザーの『金枝篇』に影響を受けた竹倉さん。土偶は、縄文人が自分が採集した食用植物をかたどったのではないかという結論にたどり着きます。

鹿島さんの大好きなフランスの19世紀の画家のグランビルも、植物の擬人化を行っています。植物の擬人化というのは突拍子もないことではないのです。

竹倉さんも「ゆるキャラ」やいらすとやでで植物の擬人化はよく見られ、現代日本でも決して珍しいことではないといいます。

サトイモ、オニグルミ、ハマグリ…縄文人が採集・食べていたもの

竹倉さんによると、土偶はサトイモ、オニグルミ、ハマグリなど縄文人が採集しているものをかたどっているとのこと。竹倉さんは、土偶が発見された森にいき、当時の植生を調べ、縄文人の食生活に思いを馳せて、土偶のもととなる植物を特定していきます。このようなイコノロジー(形状の類似)的な方法は従来の縄文研究とは一線を画す、大胆な仮説です。

竹倉さんが土偶は植物ではないかとひらめいたきっかけがサトイモ。竹倉さんは剥いたサトイモしか食べたことがなく、あるとき、神社で皮付きのサトイモをごちそうになり、閃いたそう。この他、対談では、オニグルミやハマグリの話など、『土偶を読む』に所収された土偶の話を著者の竹倉さんが語っていきます。

『土偶を読む』を読んだ方にはさらなる解説が加わり、本はまだ読んでいない人にとっては、本を読むためのイントロダクションとなります。実際、筆者は、本を読んだだけでは、あまりに突拍子もない仮説に思え、どう考えてよいのかわからなかったのですが、竹倉さんのお話を聞くと「ああ、そういう風に考えるんだ」と頷けます。縄文遺跡群が世界遺産に登録された今、縄文を別の視点から学んでみませんか。

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アーカイブはこちらから視聴可能です。友の会会員は視聴無料。

【記事を書いた人:くるくる(ALL REVIEWS友の会)】

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