原題になっている“pazazz”という言葉は、“pizazz”の異形だ。本書の序で「一九六〇年代〈ヴォーグ〉誌で編集者をつとめたダイアナ・ヴリーランドが生みだした、ファッションの精神と魅力を想起させる言葉」と簡単に説明されているが、おもしろい言葉なので、もう少し詳しくご紹介することにしよう。手元のランダムハウス英和辞典には、「活力」や「あかぬけしたスタイル」という語義が載っている。Oxford English Dictionary で引くと、”an attractive combination of vitality and glamour”とあり、日本語にすると「活気と魅力の好ましい組み合わせ」だが、そもそも口語の意味を辞書で把握するのは難しい。そこで大元に戻り、ヴリーランドが初めてこの言葉を記したとされる〈Harper's Bazaar〉誌1937年3月号の記事を参照したところ、“Pizazz……is and indefinable dynamic quality……for instance, adding Scotch puts the pizazz into a drink……There?s pizazz in this rust evening coat”とあり、「“pizazz”は言葉にできない活き活きした性質」であって、たとえばスコッチを加えた飲み物や、さび色の夜会服には「”pizazz”がある」と述べられていた。もともとファッション業界で使われはじめた言葉”pizazz”は、今では「華」や「粋」を感じさせるもの、「わくわくさせるような性質やスタイル」をもつものに、広く使われている。