欲深いのは見苦しいって、それホントかな?
自分で自分の機嫌を取り、心を満たす。究極的な話になっちゃうけど、これが完璧にできたら、たとえ自分が全世界から非難されることがあっても不幸にならないんだよね。
自分が自分のいちばんの味方で、上(じょう)気(き)元(げん)(一人さんは、上機嫌をこう書きます)に生きていれば、周りじゅうから嫌われたって関係ない。
自分といういちばんの親友が自分を信じ、愛してくれるわけだからね。
といっても、自己肯定感の高い人は自分も人も幸せにするから、全世界にソッポ向かれることは100%ないんだけど。
それぐらい、自己肯定感というのは自分の支えになるよ。ということが言いたいわけです。
だから、自己肯定感を上げるために、人は自分の「好き」を捨ててはいけません。
それはつまり、欲を持つということなんだよね。
自分で自分の機嫌を取ろうと思ったら、必ず欲がセットになります。
欲深いのは、ガツガツして見苦しい、がめつい、などと言われがちです。欲を持つと、まるで人の道を外れるようなイメージがあると思われてるの。
でもそれって、昔の人が強制的に庶民に植えつけた感覚なんだよね。
本当は、欲を持つことのほうが神的な生き方です。
欲が悪いことだと浸透させたのは、その昔、国を治めていた殿様とか、公家とか、そういった為(い)政(せい)者(しゃ)です。
庶民が欲を持っちゃうと、力をつけて言うことを聞かなくなる。それだとマズいから、「清いものは貧しい」という“清貧の意識”をすり込んだの。
人間のあるべき美しい姿は、欲を持たず、貧しいながらも真面目に働くことである。それが、人として美しい生き方だって。
ようは、特権階級の自分たちだけが贅沢できるようにしたかったわけです。
仕組まれた“デタラメ”だなんて思わず、人々は、貧しさのなか真面目に働いたんだよね。
そうやって何百年と刷り込まれてきた意識は、急には変えられません。
もちろん、時代の流れとともに、「欲を持つのって、そんなに悪いこと?」と疑問を持つ人も出てきて、昔に比べたら自由な世の中になりました。
だけど、まだまだ多くの人は、「欲を持ちすぎると痛い目にあう」みたいな思い込みに縛られています。
欲を持つことを自分にゆるせても、その欲はささやかなものじゃないといけないって、自分にブレーキをかけている。
でもね、そもそも人間に欲があるのは、神様がつけてくれたからです。
この世界は進化し続けるものだから、もし欲が不要なものだとしたら、進化の過程で消えてしまったはず。にもかかわらず、昔よりも欲を持つ人は増えているし、望みのスケールだってどんどん大きくなっています。
ということは、欲は持ったほうがいいんだよね。
楽しい欲を持てば持つほど人は幸せになるし、世の中も発展する。
それが、神様からのメッセージです。
神様が人間につけてくれたものに、不必要なものなんてないんだ。
もちろん、なかには人を傷つけたり、迷惑をかけたりする、自分勝手な欲を持つ人もいます。欲を、人を不快にさせる材料にしちゃったり……。
そんな欲を持つことは、たしかに見苦しい。
けど、それってカッコ悪いじゃない。人に嫌われるよな。
欲は欲でも、人に嫌われるような欲を持つのは、決して自分を大切にしているとは
言えません。人に嫌われる自分なんて、少しも楽しくないでしょ?
こういう欲を持つのは、自己肯定感が低い証拠です。
自分で自分を否定することしかできないから、なんとか心のすき間を埋めようとして、がめつくなってるだけなの。
でもね、自分を大切にしだしたら、間違った欲を持つことはなくなります。
自分を愛し、そのままでいいとゆるせたら、自分や人の幸せにつながる「楽しい欲」だけに目がいくようになる。
楽しい欲は「正しいワガママ」であり、持てば持つほど、みんなを幸せにしてあげられますよ。
不調は「我慢しすぎですよ」のサイン
買い物をするのに、「あっちのスーパーは卵が10円安いわ」なんて、遠くまで楽しそうに自転車をこいでいく人がいるんです。旦那が帰ってきたら、嬉(き)々(き)として「今日は卵が安く買えてね〜♪」なんて自慢しちゃったり(笑)。この、卵を10円安く買いたいというのも欲の1つなの。楽しい欲なんだよね。
もしこれが追い詰められた節約なら、まず楽しそうな顔になりません。我慢のにじむ表情になるはずだし、イライラして旦那にも当たり散らすだろう。
第一、楽しくもないことはすぐ疲れちゃって、長続きしないものです。
なにが言いたいんですかっていうと、楽しい欲を持っている人は、心もだけど、体まで元気になるんだよ。
さっきの節約だって、その欲を叶(かな)えることが楽しいから、遠くまで自転車をこいでいけるんだよね。元気じゃなきゃ、そんなことできないの。
登山が趣味の人にしても、大好きな山登りがしたいから元気なんです。
ショッピングだって、あちこちお店を見て回ろうと思ったら、相当な健脚じゃなきゃいけない。つまり、オシャレしたい、買い物をしたいという楽しい欲が、自分を元気でいさせてくれるんだよね。
だから、具合が悪くてなかなか治らないときは、ちょっと考えてみたらいい。
楽しい欲を忘れていないかな、自分に我慢させてないかなって。
とくに、原因不明の不調の場合は心因性のことも多い。ひょっとしたら、欲を捨ててしまったことが不調の原因かもしれないよね。
その場合は、楽しい欲を思い出すことで回復してくることも多いわけです。
あと、日ごろから病気に対して、
「何十万も入院費を払うぐらいなら、新作のブランドバッグを買ったほうがよっぽど楽しい」
「入院なんてしてないで、高級ホテルのスイートルームに泊まろう」
なんて思ってる人も、すごく元気です。
ブランドバッグが欲しい。スイートルームに泊まりたい。
そんな欲を持っていると、脳が本当にそうなるように動いてくれるの。病気の予防につながるような情報を集めてくれるとかさ。
もちろん、全員が全員、そうだと言ってるわけじゃないですよ。
本来は病気しないはずの人でも、自己肯定感が低くなるような生き方をしちゃうと、余計な病気を引き寄せてしまう。
だけど、楽しい欲を持てば病気しないでいられますよって話なの。
自己肯定感が高くても、病気になることはあります。
でも、それはいまの自分に原因があるわけではなく、今(こん)世(ぜ)の修行として、自分で決めてきたことかもしれないね。自分に必要で起きていることなの。
一人さんも小さいときからとにかく体が弱くて、いまこうして元気でいられるのが不思議なぐらい病気を繰り返したんだけど、それもやっぱり意味があったわけです。
病弱だったおかげで、少しでも元気になればと健康食品に興味を持ったし、それで会社を興して納税額日本一になった。
一人さんの人生には、どうしても病気が必要だったんだね。
そしてそれをちゃんと活かしたから、私はこんなに幸せなのです。
そうそう。数々の入院生活では、こんな面白い発見もあったな。
入院してると、いろんな患者仲間ができます。その人たちを見てると、人間はかくも欲に正直なものかと思ったんです。
ケガや病気をすれば、たいていリハビリがあります。そのときにね、やさしい女性看護師さんがついてくれると、男はガゼン張り切りだす(笑)。
それとか、奥さんのほかに彼女が2〜3人いるような人は、さっさと治して彼女に会いたいから、医者が「ムリしちゃダメですよ」と言ってんのに、聞く耳も持たずリハビリしまくる(笑)。
楽しい欲って、本当にいいものですね(笑)。
世間を観察しても、欲の深い人ほど見た目も若いしパワフルなんです。
それに対して、欲のない人はどんどん老け込み、魅力もなくなっちゃってる。挙げ句、具合悪くなったりしてさ。
そんな人生、つまらないじゃない。
人は、欲を持つことで輝くし、魅力も増す。
元気でこの世界を楽しみたかったら、我慢してはいけないんだ。
[書き手]斎藤一人