読書日記

下川耿史『盆踊り-乱交の民俗学』(作品社)、蒼井優『今日もかき氷 完全版』(マガジンハウス)、山崎まゆみ『白菊』(小学館)

  • 2018/05/31

消えゆくものの美しさ

東北のある町の盆踊りを見に行った時、妙にエロティックな空気を感じた私。顔は笠(かさ)で隠れているのに、白いうなじはあらわ。踊りながらちらりと見える脛(すね)。…と、踊り手達の色気は、ミニスカートの若者の比ではありませんでした。

<1>下川耿史(こうし)『盆踊り-乱交の民俗学』(作品社・2,160円)を読んで、「それもそのはず」と納得した私。江戸時代の盆踊りは、男女が日常の規範から逸脱して性的な開放感に浸る貴重な機会だったのだそう。そのせいでしょう、明治維新後は混浴禁止令と共に、盆踊り禁止令が多くの自治体で発せられます。 昭和初期には、「東京音頭」が大ヒット。そのあまりに明るい曲調に、盆踊りのエロティックなムードは一掃されたらしいのですが、夏の夜の群舞は少しはエロい方が楽しそう。盆踊りの励行は少子化対策の一助になるのでは? などと妄想しながら読みました。

盆踊り 乱交の民俗学 / 下川 耿史
盆踊り 乱交の民俗学
  • 著者:下川 耿史
  • 出版社:作品社
  • 装丁:単行本(240ページ)
  • 発売日:2011-08-19
  • ISBN:4861823382
内容紹介:
「盆踊り」とは、生娘も人妻も乱舞する"乱行パーティ"だった。日本人は、古代より性の自由を謳歌してきた。歌垣、雑魚寝、夜這い、盆踊り…万葉の時代から近代までの民俗文化としての"乱交"の歴史。秘蔵図版・多数収載。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

盆踊りで食べたい、かき氷。今はかき氷ブームだそうですが、その先鞭(せんべん)をつけたのが、<2>蒼井優『今日もかき氷 完全版』(マガジンハウス・1,620円)です。「カーサブルータス」での、ひたすらかき氷を食べ歩く連載が一冊になった本書を読めば、「本当に好きなんだ!」と実感します。
天然氷を訪ねたり、鹿児島でしろくまを制覇したり。はたまた沖縄、台湾、ハワイでもかき氷を食べまくり。見た目も美しいかき氷と、それを食べる美女とのマッチングが涼しげであると同時に、かき氷ガイドブックとしても便利な一冊です。

今日も かき氷 【完全版】 / 蒼井 優
今日も かき氷 【完全版】
  • 著者:蒼井 優
  • 出版社:マガジンハウス
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(136ページ)
  • 発売日:2013-07-05
  • ISBN:4838725698
内容紹介:
かき氷で暑気払い!蒼井優実食53軒。完全無欠のかき氷手帖。

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はかなく消えゆくものが美しく見える、夏。その代表格が花火であり、<3>山崎まゆみ『白菊』(小学館・1,620円)の帯の、美しい写真に思わず目を惹(ひ)かれました。ここに写る花火の名こそが、「白菊」なのです。

新潟県の長岡で毎年行われる花火大会で、例年最初に打ち上げられる花火が「白菊」。そこには、昭和二十年の長岡大空襲で亡くなった千四百八十余人の方々に対する、鎮魂と慰霊の気持ちが込められます。 白一色の白菊を生み出したのが、長岡の伝説の花火師、嘉瀬誠次さん。九十歳を超えて今もお元気な嘉瀬さんの、出征、シベリア抑留、戦後シベリアの空に上げた手向けの花火…といった人生を追いつつ、観客が涙を流すという長岡の花火が抱く「物語」をひもとく本書。花火ははかなく消えますが、そこに込めた思いの重さが、ずっしりと残ります。

白菊-shiragiku-: 伝説の花火師・嘉瀬誠次が捧げた鎮魂の花 / 山崎 まゆみ
白菊-shiragiku-: 伝説の花火師・嘉瀬誠次が捧げた鎮魂の花
  • 著者:山崎 まゆみ
  • 出版社:小学館
  • 装丁:単行本(251ページ)
  • 発売日:2014-07-17
  • ISBN:4093883769
内容紹介:
日本一感動する花火の原点はここにあった 「三尺玉」「ナイアガラ」そして復興祈願花火「フェニックス」……。日本三大花火大会の一つに数えられ、毎年百万人もの観衆を集める新潟県・長岡の大花火は、見ているだけで涙を誘われる“日本一感動する花火”とも評されている。なぜ、花火で泣けるのか?… もっと読む
日本一感動する花火の原点はここにあった 「三尺玉」「ナイアガラ」そして復興祈願花火「フェニックス」……。日本三大花火大会の一つに数えられ、毎年百万人もの観衆を集める新潟県・長岡の大花火は、見ているだけで涙を誘われる“日本一感動する花火”とも評されている。なぜ、花火で泣けるのか? 「涙の理由」を知るべく、著者は、半世紀以上にわたって長岡花火を打ち上げ続けてきた花火師・嘉瀬誠次(九十二歳)への取材を重ねた。その花火づくりに大きな影響を与えてきたのは「戦争」「シベリア抑留」という苛酷な経験であり、嘉瀬が亡き戦友への想いを込めてつくった花火「白菊」にこそ疑問を解く鍵があった――。「伝説の花火師」の生涯をたどり、感動の真実に迫るノンフィクション。 【編集担当からのおすすめ情報】 毎年8月2日・3日に長岡まつり大花火大会が開催されています。地元出身の著者もまた、長岡花火を見るたびに涙してきた一人だったそうです。他の花火大会を見ても、そのような思いになることはなく、なぜ長岡花火だけそうなるのか……その理由を知りたいと思ったことが、本書の出発点でした。それから、取材・執筆を重ねて、最終的に「花火」というものの奥深さをじんわりと感じられる一冊になっていると思います。

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初出メディア

東京新聞

東京新聞 2015年8月

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