コラム
磯田 道史「2023年 この3冊」毎日新聞|<1>関幸彦『武家か天皇か 中世の選択』(朝日選書)、<2>青山和夫『古代アメリカ文明』(講談社現代新書)、<3>ヤマザキマリ『扉の向う側』(マガジンハウス)
2023年「この3冊」
<1>関幸彦『武家か天皇か 中世の選択』(朝日選書)
<2>青山和夫『古代アメリカ文明』(講談社現代新書)
<3>ヤマザキマリ『扉の向う側』(マガジンハウス)
<1>は、天皇が権威を武家が権力を分掌して補い合う列島の国家体制を古代中世から近代まで通論する。大きな問いに正面から挑む近年珍しい歴史書。天皇の王威、寺社の法威、武家の武威があり、武家は天皇の体制内だが野党的役割で天皇一強の専制を許さなかった。
<2>は、マヤ・アステカ・ナスカ・インカの実像を説く。日本だけの歴史教育で最悪なのが「世界四大文明」史観。アステカ王国といえば生贄(いけにえ)というのは中世欧州を魔女狩り、日本をハラキリとするに等しい。
<3>は、ヤマザキマリのエッセイ集。日本と世界を往来した人は無数だが、その経験で共感される作品を生む人は稀有(けう)。予定調和より偶然の出会いを大切に。完璧や成功を狙っても仕方がないなど、ヤマザキ節がさく裂している。
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