書評
『プリニウス 10』(新潮社)
貴人というより奇人でもあるプリニウス。好奇心の強さなら並ぶべき者もいないから、何事につけ自分の目で確かめないと気がすまない。万巻の書に通じていながら、危険を冒してでも現物を観察したい男だった。かくして古代の膨大な知識が『博物誌』として集大成される。
このプリニウスの生涯をたどる劇画本も節目のⅩ巻まで来た。高位の軍人だったが、ネロ帝の治世を嫌って公職を降り、気ままな旅をつづけている。属州の各地で皇帝位を狙う反乱軍がぼつぼつ決起しようとしている時世なのに、ネロ帝は「私は市民からはこんなにも愛されているはずなのに…」と妄想しているから、始末におえないのだ。
シリア砂漠の都市パルミュラを訪れたプリニウス一行は、そこで仏法僧に出会う。史実では仏教徒がエジプトのアレクサンドリアまで来たという記録すらある。首都ローマでは、追いつめられたネロ帝は自害を強いられ、遺体の目には一筋の涙が……。
表情豊かな人物画と緻密をきわめる背景画がほどよく調和していて、さすがに五カ国語に翻訳されている国際級ベストセラーの秀作巨編。
このプリニウスの生涯をたどる劇画本も節目のⅩ巻まで来た。高位の軍人だったが、ネロ帝の治世を嫌って公職を降り、気ままな旅をつづけている。属州の各地で皇帝位を狙う反乱軍がぼつぼつ決起しようとしている時世なのに、ネロ帝は「私は市民からはこんなにも愛されているはずなのに…」と妄想しているから、始末におえないのだ。
シリア砂漠の都市パルミュラを訪れたプリニウス一行は、そこで仏法僧に出会う。史実では仏教徒がエジプトのアレクサンドリアまで来たという記録すらある。首都ローマでは、追いつめられたネロ帝は自害を強いられ、遺体の目には一筋の涙が……。
表情豊かな人物画と緻密をきわめる背景画がほどよく調和していて、さすがに五カ国語に翻訳されている国際級ベストセラーの秀作巨編。