旬な知性の出会いどころではない、古今東西の話題にあふれ、とにかく2時間もあれば一気に読める。
もはや飢饉も疫病も戦争も消え去りつつあると思える現代だった。突然、新型コロナ感染症が地球規模で蔓延し、そのテーマだけで人類と文明の意外な姿が浮かび上がる。欧米の一神教文化では「コロナと戦う」といきり立つが、日本の民間伝承では蘇民将来の護符を貼っておけば疫病が寄りつかないという。
「真・善・美」の価値は脳のほぼ同部位で処理されており、進化の遅い時期にできていて、あまり効率的ではないという。だから、危機に瀕した人間は、その判断よりも直感的で分かりやすいリーダーに魅かれやすいとか。およそ百年前のスペイン風邪が終息したころから、ファシズムが台頭したことを思えば、心しておくべきことだろう。
とにかく日本人の問題は「空気を読む」ことに偏りすぎており、「自粛警察」が不倫カップルも許せなくなるのは滑稽ですらある。ともあれ、イタリア人の夫がおりバイリンガルなマリさんでも、この御時世に国際結婚の難しさを痛感したとの独白には唸った。