コラム

橋爪 大三郎「2024年 この3冊」毎日新聞|雨宮処凛『死なないノウハウ』(光文社)、スラヴォイ・ジジェク『戦時から目覚めよ』(NHK出版)、ヤコブ・ラブキン『イスラエルとパレスチナ』(岩波書店)

  • 2025/01/27

2024年「この3冊」

<1>『死なないノウハウ』雨宮処凛著(光文社)

<2>『戦時から目覚めよ』スラヴォイ・ジジェク著(NHK出版)

<3>『イスラエルとパレスチナ』ヤコブ・ラブキン著(岩波書店)


<1>は、お金/仕事/親の介護/健康/トラブル/死、のお困りごと大全。どんな公的支援があるか、役所の窓口でたらい回しされる前にずばり役立つ知識が満載。著者が必死に摑み取ったノウハウを惜しみなく分け与える愛の本である。

<2>は、スロヴェニア出身の現代哲学の鬼才がウクライナ戦争と格闘する書。プーチンの民族的な妄想を解き明かし、分断の時代にはびこる権威主義との戦いを呼びかけ、左派リベラルの欺瞞と弱腰を叱りつける。その通り、よく言った。

<3>は、ユダヤ教からイスラエルを告発する本。シオニズムはそもそも無神論で社会主義の過激な民族ナショナリズム。ナチスと似ている。イスラエルで強引に政権を獲り、パレスチナ人を弾圧した。ユダヤ人がシオニズムをはね除け、パレスチナ人と連帯するのが解決の希望だ。

死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで / 雨宮 処凛
死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで
  • 著者:雨宮 処凛
  • 出版社:光文社
  • 装丁:新書(264ページ)
  • 発売日:2024-02-15
  • ISBN-10:4334102263
  • ISBN-13:978-4334102265
内容紹介:
「働けなくなったら」「お金がなくなったら」「親の介護が必要になったら」……。「これから先」を考えると押し寄せる不安。頼る人がいなければ、最悪、死ぬしかないのか?そして自らの死後、大… もっと読む
「働けなくなったら」「お金がなくなったら」「親の介護が必要になったら」……。「これから先」を考えると押し寄せる不安。頼る人がいなければ、最悪、死ぬしかないのか?そして自らの死後、大切なペットは?スマホやサブスクの解約は?この先が不安で仕方ないアラフィフが各界の専門家に取材。社会保障を使いこなすコツや各種困りごとの相談先など、人生の荒波の中で「死なない」ための無敵のサバイバル術を一冊に。

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戦時から目覚めよ: 未来なき今、何をなすべきか / スラヴォイ・ジジェク
戦時から目覚めよ: 未来なき今、何をなすべきか
  • 著者:スラヴォイ・ジジェク
  • 翻訳:富永 晶子
  • 出版社:NHK出版
  • 装丁:新書(288ページ)
  • 発売日:2024-05-10
  • ISBN-10:4140887206
  • ISBN-13:978-4140887202
内容紹介:
人類の”大惨事”は避けられるか?気候変動、生態系の破壊、食糧危機、世界大戦――人類の破滅を防ぐための時間がもう残されていないのだとしたら、我々は今何をなすべきなのか?パンデミックを経… もっと読む
人類の”大惨事”は避けられるか?

気候変動、生態系の破壊、食糧危機、世界大戦――人類の破滅を防ぐための時間がもう残されていないのだとしたら、我々は今何をなすべきなのか?パンデミックを経てますます注目される現代思想の奇才が、西欧と世界で今起きている事象の本質をえぐり、混迷と分断渦巻く世界の「可能性」を問う。

第一章 さらばレーニン、ようこそ無能な侵略者たち

第二章 戦争(と平和)の異常な平常化

第三章 黙示録の五番目の騎士

第四章 「サファリ」的な主観性

第五章 ほかの国が果たすべき役割

第六章 結束する権力者に立ち向かえ

第七章 今日のウクライナにおけるレーニン

第八章 ヒマワリの種がたっぷり入ったポケットから、何が育つのか?

第九章 倫理観の衰退を示す紛れもない兆候

第十章 偽の目覚めに騙されるな

第十一章 ロシアと西欧の文化戦争

第十二章 狂気のリズムにブレーキをかけろ

第十三章 富裕層への課税? それじゃ足りない!

第十四章 アサンジ:そうとも、われわれにはできる!

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イスラエルとパレスチナ──ユダヤ教は植民地支配を拒絶する / ヤコヴ・ラブキン
イスラエルとパレスチナ──ユダヤ教は植民地支配を拒絶する
  • 著者:ヤコヴ・ラブキン
  • 翻訳:鵜飼 哲
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(88ページ)
  • 発売日:2024-10-08
  • ISBN-10:4002710998
  • ISBN-13:978-4002710990
内容紹介:
イスラエルとはどのような国家なのか。パレスチナ自治区でジェノサイドを続けているのは「ユダヤ人国家」を僭称する植民地主義のシオニストたちである。暴力を禁じるユダヤ教の伝統にとってイ… もっと読む
イスラエルとはどのような国家なのか。パレスチナ自治区でジェノサイドを続けているのは「ユダヤ人国家」を僭称する植民地主義のシオニストたちである。暴力を禁じるユダヤ教の伝統にとってイスラエルは、救済の途上の障害以外の何ものでもない―。在カナダの碩学のユダヤ教徒による渾身の批判。

目次
シオニストによる植民地化前夜のパレスチナ
パレスチナ人に対するシオニスト国家の態度
ユダヤ教の拒絶と新しい人間の形成
ヨーロッパの遺産―暴力と無力
一〇月七日の攻撃に至るまで
復讐とイスラエルの存続
ダビデとゴリアテ、そしてサムソン―地獄に堕ちるのか?

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2024年12月21日

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