おはん / 宇野 千代
おはん
  • 著者:宇野 千代
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:文庫(128ページ)
  • 発売日:1965-02-02
  • ISBN-10:4101027021
  • ISBN-13:978-4101027029
内容紹介:
妻と愛人、二人の女にひかれる男の情痴のあさましさを、美しい上方言葉の告白体で描き、幽艶な幻想世界を築いて絶賛を集めた代表作。「人にもの問われても、ろくに返答もでけんような穏当な… もっと読む
妻と愛人、二人の女にひかれる男の情痴のあさましさを、
美しい上方言葉の告白体で描き、幽艶な幻想世界を築いて絶賛を集めた代表作。

「人にもの問われても、ろくに返答もでけんような穏当な女」である主人公“おはん"は、夫の心がほかの女、芸妓“おかよ"に移ったとき、子供を身ごもったまま自分から実家に退いた。おはんとおかよ、二人の女に魅(ひ)かれる優柔不断な浅ましくも哀しい男の懺悔――。
頽廃的な恋愛心理を柔軟な感覚と特異な語り口で描き尽し、昭和文学の古典的名作とうたわれた著者の代表作。

宇野さんはこの小説を書くのに十年の時間をかけたという。時間をかけた仕事のいみじさを、はっきり感じる。しかも十年まえ十年あとの記述にむらがない。一つの作にこれだけ打ち込んだ宇野さんに敬意を表したい。――久保田万太郎
あくまで古風な、日本庶民の、或は凡夫の、懺悔心をひそめた〈かきくどく〉調子で全篇がつらぬかれている。――亀井勝一郎
木で熟した果実は速成とは味が違う。二人の女にひかれる男の情痴の浅ましさを極度に抽象して、ほとんど観念的な美にまで昇華して描いている。――河上徹太郎
近松でも読む様な一種の味わいがあって面白かった。特に初めの方がよいと思った。作者は、時も場所も不問に附し、不思議な魅力を持った話術を創案して、言葉が言葉だけの力で生き長らえたいと言っている様な、一種の小説的幻想世界を発明している。事実に屈服した現代小説界では珍しい事である。――小林秀雄

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