読書日記
夏休み企画〈書評でGo on a Trip!〉日本:西日本編

※Special Thanks!:書評推薦者 くるくるさん、hiroさん、やすだともこさん、山本陽子さん
近畿にGo!
【滋賀県】
■今村 翔吾『八本目の槍』(新潮社)
評者:本郷 和人彼らの思いは一つ。太閤殿下・秀吉のご恩に報いること。ではなぜ彼らは異なる道を選択したのか。特に佐吉こと石田三成は、なぜ皆の協力を得ぬままに、強大な家康に挑んで敗れたのか。(この書評を読む)
【京都府】
■井上章一『京都ぎらい』(斎藤 環)
評者:斎藤 環「千年の古都のいやらしさ」と帯にある。あ~はいはい、「ぶぶ漬け」が帰宅フラグで、「この前の戦争」が応仁の乱なんでしょう? そんな先入観で本書を読み始めた評者(東北人)は、想像をうわまわる恐怖にうち震えた。(この書評を読む)
【大阪府】
■楡 周平『修羅の宴』(講談社)
評者:逢坂 剛この小説は、激動期を生きた滝本個人の栄枯に託して、日本経済そのものの盛衰を描いた、渾身の力作である。(この書評を読む)
【兵庫県】
■小川洋子『ミーナの行進』(中央公論新社)
評者:井上ひさし小説の枠組みはこうである。一九七二(昭和四十七)年春から一年間、語り手の「私」は、芦屋の伯母の屋敷で暮らすことになった。伯母は「私」の母の姉、フレッシーという清涼飲料水で財をなした会社創始者の御曹司と結婚している。(この書評を読む)
【奈良県】
■中村 士『古代の星空を読み解く: キトラ古墳天文図とアジアの星図』(東京大学出版会)
解説:中村 士奈良県所在のキトラ古墳内部の天井に、詳細な天文図が描かれていることが発見されたのは一九九八年、この古墳自体の調査開始は一九八三年からだから、もう三十五年が経過した。(この書評を読む)
【和歌山県】
■神坂 次郎『縛られた巨人―南方熊楠の生涯』(新潮社)
評者:紀田 順一郎とにかく熊楠という人物が躍動している。和歌山弁で自在にしゃべり、笑い、嘆き、怒りまくる。(この書評を読む)
中国地方にGo!
【鳥取県】
■桜庭 一樹『製鉄天使』(東京創元社)
評者:仲俣 暁生物語の始まる1979年3月の時点で小豆は小学生。製鉄所の娘である彼女には、彫刻刀からバイクまで、鉄製の道具ならば意のままに操れる特殊な才能が備わっている。中学進学後、わずか4人の手勢で女子暴走族「製鉄天使」を結成した小豆は、地元の「エドワード族」を倒したのを皮切りに、山陰地方、ついで中国地方全土の制圧に成功する。(この書評を読む)
【島根県】
■角田 徳幸『たたら製鉄の歴史』(吉川弘文館)
前書き:角田 徳幸(『もののけ姫』の)こうしたシーンは、たたら製鉄をテーマにした博物館である島根県安来(やすぎ)市和鋼(わこう)博物館、日本で唯一現存するたたらである雲南市吉田町菅谷鈩(すがやたたら)などの取材を通して作り上げられたという。(この書評を読む)
【岡山県】
■小川 洋子『まぶた』(新潮社)
評者:堀江敏幸小川洋子は、この薄い膜の開閉ひとつですべてが決まり、すべてが終わってしまうはかない劇を見つづけてきた書き手だが、まぶた、という言葉を作品集全体に冠したことによって、一篇一篇の切なさのかたちがより明確になったように思われる。(この書評を読む)
【広島県】
■フェルディナント・ヤマグチ『仕事がうまくいく7つの鉄則 マツダのクルマはなぜ売れる?』(日経BP社)
評者:楠木健世界の自動車市場でのシェアはたったの2%。にもかかわらず、ファンの心をがっちりつかみ、好業績をたたき出す。(この書評を読む)
【山口県】
■桐原 健真『吉田松陰: 「日本」を発見した思想家』(筑摩書房)
評者:磯田 道史松陰の「思想遍歴」を追って論じた思想史の本であり、この本を読めば、松陰が、どのようにして松陰になったのかがわかる。(この書評を読む)
四国にGo!
【徳島県】
■宇野 千代『おはん』(新潮社)
評者:森 まゆみ宇野千代の小説には慰めがあり、知的であり、自分をつき放す爽快感があり、こんな風に生きてみたいと思わせる強さとカッコ良さがある。どんなときも恨みや愚痴をいわず、何ごとも前向きに解釈し、事態を好転させていく。(この書評を読む)
【香川県】
■土橋 章宏『駄犬道中こんぴら埋蔵金』(小学館)
評者:本郷和人待ってました! 先のお伊勢さま「おかげ参り」に続いて、今回は「こんぴらさま」だ!「こんぴらさま」とは讃岐(香川県)の金刀比羅宮(ことひらぐう)のこと。由緒あるお宮であったが、戦国時代の兵火により一たん荒廃。ところが江戸時代になるや、全国の民衆のたいへん熱い支持を得た。いってみれば「庶民派の神さま仏さま」であり、当時は「神仏習合」により象頭山金毘羅(ぞうずさんこんぴら)大権現と呼ばれた。(この書評を読む)
【愛媛県】
■司馬遼太郎『坂の上の雲』(文藝春秋)
評者:山崎正和司馬遼太郎さんの作家としての一番の関心事は、明治以降の国民国家としての日本というものだったと思います。(この書評を読む)
【高知県】
■大原 富枝『草を褥に―小説牧野富太郎』(小学館)
評者:紀田 順一郎牧野に関する従来の伝記とは異なり、本書は妻の苦闘にスポットをあてている。経済観念ゼロの夫にかわって質屋に通い、乳飲み子をかかえながら借金取りを撃退したり、待合を経営したりする。過労がたたって東京帝大の付属病院に入院するが、臨終のさいにも入院費が切れたため、情け容赦もなくシーツにくるまれ、ベッドから放り出されてしまった。(この書評を読む)
【四国】
■大江 健三郎『同時代ゲーム』(新潮社)
評者:井上 ひさしひとりの歴史教師が、かつて「村」(終始、「村=国家=小宇宙」と表記されているのだが)の青少年たちの性的あこがれであり、のちキャバレーで艶名をはせ、妊娠中絶手術の病後を養うため帰村中のところをこの歴史教師に襲われ、のちに東京銀座で盛業のクラブを経営し、たまたま来日した米国副大統領閣下の性的友だちの役目も引き受け、果ては入水自殺をとげ、死んだと思えばまた現れて、いまは四国山中の大きい森のなかのその村で巫女たらんとしている自分の双子の妹に向けて、呆れるほどの情熱をもってしたためる六通の長い手紙、これが語りの層である。(この書評を読む)
九州・沖縄にGo!
【福岡県】
■東海林さだお『行くぞ!冷麺探険隊』(文藝春秋)
評者:鹿島茂「博多の夜の食べまくり」の「推定年齢六十九歳」の「おねえさん」の会話の拾い方を見れば、氏がバルザック級の慧眼の持ち主であることは容易に見て取れる。(この書評を読む)
【佐賀県】
■山下 惣一『村からのホンネ―きょうからあしたの農を考える』(ダイヤモンド社)
評者:森まゆみ九州で佐賀県だけがヤマイモに関心が低いのはナゼか。それは旧鍋島藩に百姓がきびしく搾取され、遊び心も育たなかったからではないか、という。(この書評を読む)
【長崎県】
■飯嶋 和一『黄金旅風』(小学館)
評者:豊崎 由美大きな富をもたらす貿易の拠点として、様々な人物が私利私欲を肥やさんと長崎を食い物にする。そんな悪党どもの所業に苦しむ民を救うため、長崎を「誰もが、穏やかに、その日その日を生きて、家族や朋輩を愛し、隣人を尊んで、家柄やら生国やら、人種やら財やら、つまらぬことは一切こだわらず、ここに住み暮らす皆が助け合って居きられるようなそんな『約束の地』に」するため、知恵と勇気と俠気と慈愛をもって戦う二人の男の立ち回りを描いてドラマチック。読後、胸の中を清々しい風が吹き抜けていく。(この書評を読む)
【熊本県】
■夏目 漱石『草枕』(新潮社)
評者:中野 翠私には『草枕』は「仙と俗・必死の攻防戦」のように感じられる。(この書評を読む)
【大分県】
■赤神 諒『大友二階崩れ』(日本経済新聞出版社)
評者:本郷 和人有能をもって知られる大友家臣団の面々は、それぞれの思惑に従って虚々実々の駆け引きを展開し、それが「二階崩れの変」という陰惨な事件に発展していく。(この書評を読む)
【宮崎県】
■中村 啓信(現代語訳)『新版 古事記 現代語訳付き』(角川学芸出版)
評者:楠木健歴史書というよりも神話だが、鮮烈に描かれる物語を通して、日本の原点を肌で感じる。(この書評を読む)
【鹿児島県】
■島尾ミホ『海辺の生と死』(中央公論新社)
評者:酒井順子島尾ミホは、奄美大島のすぐ隣にある、加計呂麻(かけろま)島の旧家に生まれました。戦時中、島に駐屯していた特攻隊長の島尾敏雄と出会い、敗戦後に結婚したのです。(この書評を読む)
【鹿児島県】
■海音寺潮五郎『西郷隆盛』、司馬遼太郎『翔ぶが如く』(KADOKAWA/文藝春秋)
評者:丸谷才一,木村尚三郎,山崎正和(丸谷)海音寺さんはまず西郷隆盛の外見に惚れるんです。男っぷりがいいというんですね。本当にそう思いこんでいる。で、次には性格に惚れ、見識に惚れ、何から何まで無茶苦茶に気に入っている。たしかに惚れなければ魅力がわからないということはあります。(この書評を読む)
【沖縄県】
■与那原 恵『首里城への坂道 - 鎌倉芳太郎と近代沖縄の群像』(中央公論新社)
評者:鷲田 清一もし彼がいなかったら、そして彼が撮りためた乾板写真と手書きで複写された史料がなかったら、首里城の取り壊しの阻止も後の復元も、紅型(びんがた)染織の技法の再生もありえなかった。が、その縁の下ともいうべき仕事は、死後30年ほとんど忘れ去られている(この書評を読む)
【沖縄県】
■真藤 順丈『宝島』(講談社)
評者:大森 望“生々流転する沖縄の叙事詩”に身を委ねる濃密な読書体験、怒濤の540ページだ。(この書評を読む)
ALL REVIEWSをフォローする