読書日記

夏休み企画〈書評でGo on a Trip!〉中東編

  • 2020/08/16
世界各地を〈書評〉で巡る〈書評でGo on a Trip!〉企画、続いては中東編です!

中東にGo!

【トルコ】
ジョナサン・ハリス『ビザンツ帝国 生存戦略の一千年』(白水社)

評者:本村 凌二

六世紀のユスティニアヌス帝のころビザンツ帝国は最盛期をむかえる。ローマ帝国の大半を征服し、首都には斬新にして壮麗な聖ソフィア教会が建てられる。史上最高額の建造物は異民族に畏敬の念をいだかせ帝国にひれ伏させるのに絶大な効果をもった。(この書評を読む)

ビザンツ帝国 生存戦略の一千年 / ジョナサン・ハリス
ビザンツ帝国 生存戦略の一千年
  • 著者:ジョナサン・ハリス
  • 翻訳:井上 浩一
  • 出版社:白水社
  • 装丁:単行本(380ページ)
  • 発売日:2018-01-20
  • ISBN-10:4560095906
  • ISBN-13:978-4560095904
内容紹介:
外部からの脅威に対して絶えず革新と順応を繰り返しながら、千年にわたり東地中海に栄えた帝国の興亡を、おもな皇帝を軸に語る。

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【トルコ】
ウラジーミル・アレクサンドロフ『かくしてモスクワの夜はつくられ、ジャズはトルコにもたらされた:二つの帝国を渡り歩いた黒人興行師フレデリックの生涯』(白水社)

評者:若島 正

そして若いロシア貴族の女性が「女給」として働いていたコンスタンティノープルでの、昔日の恋愛映画を観るような哀切極まりないエピソード。「複数の外国人が、亡命ロシア人将校がレストランの席からさっと立ちあがり、厳粛な面持ちで女給の手に口づけするのを目撃している。将校と女給はかつてまったく違う世界で暮らしていたときの知り合いどうしだったのだ」(この書評を読む)

かくしてモスクワの夜はつくられ、ジャズはトルコにもたらされた:二つの帝国を渡り歩いた黒人興行師フレデリックの生涯 / ウラジーミル・アレクサンドロフ
かくしてモスクワの夜はつくられ、ジャズはトルコにもたらされた:二つの帝国を渡り歩いた黒人興行師フレデリックの生涯
  • 著者:ウラジーミル・アレクサンドロフ
  • 翻訳:竹田 円
  • 出版社:白水社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(366ページ)
  • 発売日:2019-09-27
  • ISBN-10:4560097224
  • ISBN-13:978-4560097229
内容紹介:
アメリカン・ドリームをモスクワで叶えた黒人フレデリック。ナイトクラブの興行で巨万の富を築いた彼を革命が襲う――その栄光と破滅

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【トルコ】
オルハン・パムク『僕の違和感』(早川書房)

評者:小野 正嗣

どの土地にも郷愁を誘う「声」が存在する。その声に運ばれて届く、喪失を運命づけられているものが、人々を過去に呼び戻す。だからこそ耳にした瞬間、淡い懐かしさが胸に広がる。トルコのイスタンブルでは、それは街路に響く「ボーザー」という声だと、この国際都市が生んだノーベル賞作家パムクは言う。本書は、この「ボザ」と呼ばれる伝統的なアルコール飲料を売り歩くメヴルトという男の半生を描いた小説である。(この書評を読む)

僕の違和感〈上〉 / オルハン・パムク
僕の違和感〈上〉
  • 著者:オルハン・パムク
  • 翻訳:宮下 遼
  • 出版社:早川書房
  • 装丁:単行本(392ページ)
  • 発売日:2016-03-24
  • ISBN-10:4152095989
  • ISBN-13:978-4152095985
内容紹介:
イスタンブルで呼び売りとなった青年メヴルトが見つめた大都市、そして彼の恋と夢……『わたしの名は赤』のノーベル賞作家の最新作!

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【シリア】
デルフィーヌ・ミヌーイ『シリアの秘密図書館』(東京創元社)

評者:栗原 裕一郎

「アラブの春」後、シリアは内戦状態に陥った。アサド政権に抵抗する人々は首都ダマスカス付近の町ダラヤに籠城したが、政府軍はダラヤを封鎖し殲滅(せんめつ)攻撃を仕掛けた。絶望的な状況の中、若者たちは書物に自由と希望を見いだす。破壊された町や家屋から本を掘り起こし、地下に粗末な図書館を造ったのだ。(この書評を読む)

シリアの秘密図書館 / デルフィーヌ・ミヌーイ
シリアの秘密図書館
  • 著者:デルフィーヌ・ミヌーイ
  • 翻訳:藤田真利子
  • 出版社:東京創元社
  • 装丁:単行本(195ページ)
  • 発売日:2018-02-28
  • ISBN-10:4488003877
  • ISBN-13:978-4488003876
内容紹介:
シリア内戦下、ダマスカス近郊の町ダラヤでは、人々が政府軍に包囲されていた。一般にテロリストの町と報道されていたが、実際のところ彼らは自由を求める市民たちだった。砲撃に脅え、死と隣… もっと読む
シリア内戦下、ダマスカス近郊の町ダラヤでは、人々が政府軍に包囲されていた。一般にテロリストの町と報道されていたが、実際のところ彼らは自由を求める市民たちだった。砲撃に脅え、死と隣り合わせの過酷な日々。だがそんな過酷すぎる状況下でも、散逸した本を集めて地下に「秘密の図書館」を作った人々がいた――。本に希望を見出し、知識を暴力への盾として闘った人々を描く、感動のノンフィクション!

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【シリア】
アラン・グラッツ『明日をさがす旅 故郷を追われた子どもたち』(福音館書店)

解説:安田 菜津紀

こうして誰しもの先祖が、厳しい歴史をかいくぐりながらも、時には誰かの支えを受けて生き延びてきたはずだ。そのつながりを忘れた時に、人々は無関心におぼれ、いざ難民たちの姿が目の前に現れると「排斥」を声高に叫ぶのだろう。(この書評を読む)

明日をさがす旅 故郷を追われた子どもたち / アラン・グラッツ
明日をさがす旅 故郷を追われた子どもたち
  • 著者:アラン・グラッツ
  • 翻訳:さくまゆみこ
  • 出版社:福音館書店
  • 装丁:単行本(416ページ)
  • 発売日:2019-11-13
  • ISBN-10:4834083853
  • ISBN-13:978-4834083859
内容紹介:
ドイツ、キューバ、シリア。それぞれの故郷を追われた3人の子どもたちの物語が、時を超えて響き合う。

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【シリア】
デイヴィッド・パトリカラコス『140字の戦争――SNSが戦場を変えた』(早川書房 )

解説:安田 純平

〈あらゆる情報に対する疑念のタネを人びとの心にまけばまくほど、何かの情報を聞くか読んだ時に真実を見極める力を人びとから奪っていく。それこそがロシア政府のプロパガンダの全体的な狙い〉と著者は指摘している。シリア内戦はまさにそのように展開されていった。(この書評を読む)

140字の戦争――SNSが戦場を変えた / デイヴィッド・パトリカラコス
140字の戦争――SNSが戦場を変えた
  • 著者:デイヴィッド・パトリカラコス
  • 翻訳:江口 泰子
  • 出版社:早川書房
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(370ページ)
  • 発売日:2019-05-23
  • ISBN-10:4152098627
  • ISBN-13:978-4152098627
内容紹介:
ツイッターをはじめとするソーシャルメディアが新たな連帯と分断を生む現代の紛争地帯を徹底ルポ。解説/安田純平(ジャーナリスト)

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【イラク】
デイヴィッド・フィンケル『帰還兵はなぜ自殺するのか』(亜紀書房)

解説:古屋 美登里

そこにはアフガニスタンやイラクから帰還した兵士たちの苦しみが、肉体的なものから精神的なものまでことごとく、目を背けたくなるほど克明に描かれていたからである。しかしそれ以上に驚いたのは、この作品の構成のみごとさと文章の喚起力だった。一章毎に描き出す対象を変えて「戦争の傷」に迫っているのに、著者の存在が読者からはまったく見えない。もちろん、文章を書いているのは著者のデイヴィッド・フィンケルなのだが、彼の目がカメラそのものとなって、事実という写真をテーブルの上に広げていくような描き方である。(この書評を読む)

帰還兵はなぜ自殺するのか / デイヴィッド・フィンケル
帰還兵はなぜ自殺するのか
  • 著者:デイヴィッド・フィンケル
  • 翻訳:古屋 美登里
  • 出版社:亜紀書房
  • 装丁:単行本(390ページ)
  • 発売日:2015-02-10
  • ISBN-10:475051425X
  • ISBN-13:978-4750514253
内容紹介:
ピュリツァー賞作家が「戦争の癒えない傷」の実態に迫る傑作ノンフィクション。内田樹氏推薦! 本書に主に登場するのは、5人の兵士とその家族。 そのうち一人はすでに戦死し、生き残った者た… もっと読む
ピュリツァー賞作家が「戦争の癒えない傷」の実態に迫る傑作ノンフィクション。内田樹氏推薦!

本書に主に登場するのは、5人の兵士とその家族。 そのうち一人はすでに戦死し、生き残った者たちは重い精神的ストレスを負っている。
妻たちは「戦争に行く前はいい人だったのに、帰還後は別人になっていた」と語り、苦悩する。
戦争で何があったのか、なにがそうさせたのか。
2013年、全米批評家協会賞最終候補に選ばれるなど、米国各紙で絶賛の衝撃作!

「戦争はときに兵士を高揚させ、ときに兵士たちを奈落に突き落とす。若い兵士たちは心身に負った外傷をかかえて長い余生を過ごすことを強いられる。
その細部について私たち日本人は何も知らない。何も知らないまま戦争を始めようとしている人たちがいる。」(内田樹氏・推薦文)

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【イラク】
ナディア・ムラド『THE LAST GIRLーイスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語―』(東洋館出版社)

評者:渡辺 由佳里

ムラドが注目を集めるようになったのは、2015年12月の国連安全保障理事会でのスピーチだった。過激派の「イスラム国(ISIS)」が少数民族ヤジディに対して行った集団虐殺と性暴力を調査し、公正な裁きと、現在もISISに拘束されたままのヤジディの救済を求めるものだった。このとき、ムラドはまだ22歳だった。(この書評を読む)

THE LAST GIRLーイスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語― / ナディア・ムラド
THE LAST GIRLーイスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語―
  • 著者:ナディア・ムラド
  • 翻訳:吉井 智津
  • 出版社:東洋館出版社
  • 装丁:単行本(430ページ)
  • 発売日:2018-11-30
  • ISBN-10:4491036179
  • ISBN-13:978-4491036175
内容紹介:
2018年ノーベル平和賞を受賞したナディア・ムラド氏が、自身の壮絶な経験を物語る

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【イラク】
ハサン・ブラーシム『死体展覧会』(白水社)

評者:石井 千湖

謎めいた組織の新入りエージェントになった「私」は、幹部と思われる「彼」に仕事のレクチャーを受ける。「私」に与えられた任務とは、クライアントを殺し、その死体を芸術作品として市街に展示することだった。「彼」は組織を欺こうとしたあるエージェントの末路を語るが……。(この書評を読む)

死体展覧会  / ハサン・ブラーシム
死体展覧会
  • 著者:ハサン・ブラーシム
  • 翻訳:藤井 光
  • 出版社:白水社
  • 装丁:単行本(198ページ)
  • 発売日:2017-10-24
  • ISBN-10:456009053X
  • ISBN-13:978-4560090534
内容紹介:
現実か悪夢か。イラクにはびこる不条理な暴力を、亡命作家が冷徹かつ幻想的に描き出す。現代アラブ文学の新鋭が放つ鮮烈な短篇集。

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【イラン】
シリン・ネザマフィ『白い紙/サラム』(文藝春秋)

評者:張 競

イラン・イラク戦争の最中、一人の少女が両親とともにテヘランから、人口二万人にも満たない国境の町に引っ越してきた。戦争医師の父親が最前線に近い病院に転勤したからだ。地元の高校で勉強しているうちに、ハサンという同級生と恋するようになった。ハサンは成績が抜群で、将来医者になるのが夢である。だが、不意の出来事は彼の運命を大きく変えた。(この書評を読む)

白い紙/サラム / シリン・ネザマフィ
白い紙/サラム
  • 著者:シリン・ネザマフィ
  • 出版社:文藝春秋
  • 装丁:単行本(160ページ)
  • 発売日:2009-08-07
  • ISBN-10:4163284109
  • ISBN-13:978-4163284101
内容紹介:
文學界新人賞受賞作(「白い紙」)、留学生文学賞受賞作(「サラム」)。大型新人の傑作二作。

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【アフガニスタン】
カーレド・ホッセイニ『そして山々はこだました』(早川書房)

評者:鴻巣 友季子

叙述は一人称文体あり、三人称文体あり、インタビュー形式になったり、手紙の形がとられたりするが、そうした多角的な描き方にあってなお、謎めいていて衝撃的なのは、愛やセックスについて赤裸々に書く詩人でもあるニラだ。アフガニスタンは、ペルシャ語文学、とくに詩の千年余りの伝統を持ち、女性が反逆や風刺の声を発することを許されるランダイという短詩もある。抑圧下の女性芸術家であるニラの存在が物語に一段とふくらみを持たせている。(この書評を読む)

そして山々はこだました / カーレド・ホッセイニ
そして山々はこだました
  • 著者:カーレド・ホッセイニ
  • 翻訳:佐々田 雅子
  • 出版社:早川書房
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(266ページ)
  • 発売日:2014-10-24
  • ISBN-10:4152094915
  • ISBN-13:978-4152094919
内容紹介:
固い絆を持つ幼い兄妹は、貧しさのため離れ離れになってしまう。激動する時代に翻弄されながらも、兄は妹のことを思いつづけるが……ベストセラー『君のためなら千回でも』の作家が送る傑作長篇

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【アフガニスタン】
前田 耕作『玄奘三蔵、シルクロードを行く』(岩波書店)

評者:張 競

意外なことに、長いあいだアフガニスタンの人々もこの巨大な彫刻が仏像であるとは知らなかった。一八八五年、イギリスの調査団は一年前に英訳された『大唐西域記』を手引きにアフガニスタンを訪れ、「バーミヤンの巨大な像」が仏像であることにようやく気付いた。もし、玄奘の証言がなかったら、謎は歴史の深い塵埃に埋もれてしまったのかもしれない。(この書評を読む)

玄奘三蔵、シルクロードを行く  / 前田 耕作
玄奘三蔵、シルクロードを行く
  • 著者:前田 耕作
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:新書(224ページ)
  • 発売日:2010-04-21
  • ISBN-10:4004312434
  • ISBN-13:978-4004312437
内容紹介:
中国・天山山脈からガンダーラへ。「シルクロード」と呼ばれた古道のほとりで、東西の宗教や言語がまじりあう豊穣な文化をはぐくんだ西域・中央アジアの国々。今は歴史の彼方に失われたその姿を、旺盛な好奇心と鋭い観察力をもって記録に留めたのが玄奘三蔵そのひとであった。前人未踏の地をゆく、険しくも心躍る玄奘の旅を追体験する。

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【イエメン】
旦部 幸博『珈琲の世界史』(講談社)

評者:鹿島 茂

十四世紀頃、宗教紛争でエチオピアからイエメンに逃れてきた人たちによって伝えられたコーヒーノキの果実はエチオピア発祥の別系統の飲み物「カフワ」とイエメンの地で結びつき、「コーヒーのカフワ」というスーフィー(イスラム教の一派)愛飲の飲み物を生みだす。(この書評を読む)

珈琲の世界史 / 旦部 幸博
珈琲の世界史
  • 著者:旦部 幸博
  • 出版社:講談社
  • 装丁:新書(256ページ)
  • 発売日:2017-10-18
  • ISBN-10:4062884453
  • ISBN-13:978-4062884457
内容紹介:
コーヒーブームを生んだのはナポレオン!?モカ港はなぜ衰退した?日本最大のブームはいつ?誰も書かなかったコーヒー1200年史!

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【サウジアラビア】
中田 考『イスラーム学』(作品社)

評者:橋爪 大三郎

ワッハーブ派を興した法学者イブン・アブドゥルワッハーブは一八世紀半ば、豪族イブン・サウードと政教盟約を結んだ。これが発展して、サウジ・アラビアができた。(この書評を読む)

イスラーム学 / 中田 考
イスラーム学
  • 著者:中田 考
  • 出版社:作品社
  • 装丁:単行本(581ページ)
  • 発売日:2020-01-24
  • ISBN-10:4861827787
  • ISBN-13:978-4861827785
内容紹介:
文明的背景を異にする日本で、イスラーム世界を根幹から理解するために。著者は伝統イスラーム法学を脱構築し現代に甦らせる表現形態を探ると共に、どこまでそれを伝えることが可能であるか… もっと読む
文明的背景を異にする日本で、イスラーム世界を根幹から理解するために。

著者は伝統イスラーム法学を脱構築し現代に甦らせる表現形態を探ると共に、どこまでそれを伝えることが可能であるか?を一貫して考え抜いてきた。
本書は、イスラームの世界観を背景に激動する国際政治を俯瞰するための基本的視座を提供し、井筒俊彦が切り拓いた東洋哲学としてのイスラーム理解に新たな一歩を進める。

「少年老い易く学成り難し。イスラーム研究を志して40年近くが経った。当時、出版されているイスラーム学の古典の数は限られて おり、日本の大学や図書館には基本文献さえも揃っていなかった。 (中略)昔を想うと、日本のイスラームの研究環境は、隔世の感がある。 しかし日本のイスラーム学はそれに見合う発展を遂げているとは言い難い。確かにイスラーム研究者の数、研究論文の本数は増えている。しかし私見によると、質はむしろ低下しており、国際的に比較すると相対的な立ち遅れはより明瞭になる……」

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【レバノン】
重信 房子『ジャスミンを銃口に―重信房子歌集』(幻冬舎)

評者:四方田 犬彦

『ジャスミンを銃口に』は巧みに編集された歌集である。ベイルートに初めて到着し、恋人と廻(めぐ)りあったときの心の衝跳(ときめき)。戦いのさなかに次々と倒れてゆく同志たちへの挽歌。帰国後の獄中生活と、法廷で何十年ぶりかでなされた旧友たちとの再会。そしてベイルート以前の、東京でのバリケード闘争の回想などが、走馬灯のように現われては甘やかな余韻を残して消えてゆく。(この書評を読む)

ジャスミンを銃口に―重信房子歌集 / 重信 房子
ジャスミンを銃口に―重信房子歌集
  • 著者:重信 房子
  • 出版社:幻冬舎
  • 装丁:単行本(131ページ)
  • 発売日:2005-07-01
  • ISBN-10:4344010159
  • ISBN-13:978-4344010154
内容紹介:
軍服で地面を蹴って民族の踊りにあふれるこれも戦場 撃ち尽くし挟撃されて戦士らがジェラシの土地を血に染めし夏-。闘争、恋愛、家族、祖国への思い…。独房で詠んだ、決意の美しさが胸にしみいる作品集。

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【パレスチナ】
ジョー・サッコ『パレスチナ』(いそっぷ社)

評者:四方田 犬彦

サッコは大学でジャーナリズムを学んだアメリカの漫画家である。1991年から翌年にかけてイスラエル占領下にあるヨルダン川西岸とガザをくまなく歩き回り、インティファーダに沸き返る民衆に混じって数多くのことを見聞した。帰国後彼は見聞をもとにしてこの作品を描きあげ、「コミックス・ジャーナリズム」という独自のジャンルの創始者となった。(この書評を読む)

パレスチナ / ジョー・サッコ
パレスチナ
  • 著者:ジョー・サッコ
  • 翻訳:小野 耕世
  • 出版社:いそっぷ社
  • 装丁:単行本(285ページ)
  • ISBN-10:4900963372
  • ISBN-13:978-4900963375
内容紹介:
ジョー・サッコは1991‐92年にかけてイスラエルの占領地であるヨルダン川西岸地区やガザ地区で2か月間を過ごした。折しもパレスチナ人のあいだから自然に起きたといわれる第1次インティファーダ… もっと読む
ジョー・サッコは1991‐92年にかけてイスラエルの占領地であるヨルダン川西岸地区やガザ地区で2か月間を過ごした。折しもパレスチナ人のあいだから自然に起きたといわれる第1次インティファーダ(民衆蜂起)の時である。紛争の最前線で彼は、拷問を受けたパレスチナ人から観光気分のイスラエル人まで、さまざまなインタビューをこころみる。そしてパレスチナ人から堰をきったように語られる苛酷な事実をリポートしていく。

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【パレスチナ】
岡 真理『ガザに地下鉄が走る日』(みすず書房)

評者:沼野 充義

この現実の中で「文学は何の役に立つのか」という昔から繰り返されてきた疑念は、もう頭をもたげない。著者はいま大事なのは文学よりはジャーナリズム、しかしそれは「情報に還元されない文学的強度をもった」「緊急のエクリチュール」なのだと信じ、それを実践している。(この書評を読む)

ガザに地下鉄が走る日 / 岡 真理
ガザに地下鉄が走る日
  • 著者:岡 真理
  • 出版社:みすず書房
  • 装丁:単行本(304ページ)
  • 発売日:2018-11-17
  • ISBN-10:4622087472
  • ISBN-13:978-4622087472
内容紹介:
それでもなお人間らしく生きることが、暴力への抵抗だ。生きながらの死を強いる占領と、パレスチナで暮らす人々との出会いを伝える。

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【パレスチナ】
エミール・ハビービー『悲楽観屋サイードの失踪にまつわる奇妙な出来事』(作品社)

評者:四方田 犬彦

パレスチナ文学といえば生真面目な告発の文学ばかりという偏見があるが、本書はそうした偏見を覆す、幻想的な前衛文学として、おおいに読まれるべきであろう。(この書評を読む)

悲楽観屋サイードの失踪にまつわる奇妙な出来事 / エミール ハビービー
悲楽観屋サイードの失踪にまつわる奇妙な出来事
  • 著者:エミール ハビービー
  • 翻訳:山本 薫
  • 出版社:作品社
  • 装丁:単行本(237ページ)
  • ISBN-10:4861821088
  • ISBN-13:978-4861821080

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【イスラエル】
エドワード・W. サイード『オリエンタリズム』(平凡社)

評者:四方田 犬彦

(サイードは)60歳をすぎて白血病を医者から宣告されると、イスラエル官憲に逮捕されることを覚悟で、50年ぶりに故郷エルサレムに家族を連れて旅行した。娘と息子に、自分の生まれ育った美しい町を見せておきたいという願いからのことだった。だがそれはあまりに変わり果てた故郷を知る、深い悲しみの旅となった。(この書評を読む)

オリエンタリズム〈上〉  / エドワード・W. サイード
オリエンタリズム〈上〉
  • 著者:エドワード・W. サイード
  • 翻訳:今沢 紀子
  • 出版社:平凡社
  • 装丁:新書(456ページ)
  • 発売日:1993-06-21
  • ISBN-10:4582760112
  • ISBN-13:978-4582760118
内容紹介:
第1章 オリエンタリズムの領域(東洋人を知る心象地理とその諸表象-オリエントのオリエント化プロジェクト危機)第2章 オリエンタリズムの構成と再構成(再設定された境界線・再定義された問… もっと読む
第1章 オリエンタリズムの領域(東洋人を知る
心象地理とその諸表象-オリエントのオリエント化
プロジェクト
危機)
第2章 オリエンタリズムの構成と再構成(再設定された境界線・再定義された問題・世俗化された宗教
シルヴェストル・ド・サシとエルネスト・ルナン-合理主義的人類学と文献学実験室
オリエント存住とオリエントに関する学識-語彙記述と想像力とが必要とするもの
巡礼者と巡礼行-イギリス人とフランス人)

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【イスラエル】
ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』(河出書房新社)

評者:本村 凌二

人類は何を望んでいるのか、その自分の真の姿を見抜けるかどうか。そう警告する著者は若いイスラエル人歴史学者であるが、本書は熟読に値する重さをもっている。(この書評を読む)

サピエンス全史文明の構造と人類の幸福 / ユヴァル・ノア・ハラリ
サピエンス全史文明の構造と人類の幸福
  • 著者:ユヴァル・ノア・ハラリ
  • 翻訳:柴田 裕之
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:単行本(300ページ)
  • 発売日:2016-09-08
  • ISBN-10:430922671X
  • ISBN-13:978-4309226712
内容紹介:
虚構が他人との協力を可能にし、文明をもたらした! では文明は人類を幸福にしたのか? 現代世界を鋭くえぐる世界的ベストセラー!

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