書評

『大友二階崩れ』(日本経済新聞出版社)

  • 2018/05/07
大友二階崩れ / 赤神 諒
大友二階崩れ
  • 著者:赤神 諒
  • 出版社:日本経済新聞出版社
  • 装丁:単行本(282ページ)
  • 発売日:2018-02-21
  • ISBN-10:4532171466
  • ISBN-13:978-4532171469
内容紹介:
日経小説大賞(選考委員:辻原登、髙樹のぶ子、伊集院静)受賞作。豊後の大友宗麟が世に出た政変を重臣達の視点で描く本格歴史小説!

「義」に忠実な家臣の家督をめぐる攻防戦

親が長男に財産を譲る。ところが何らかの理由があって、「やっぱりなかったことに」といって、その財産をたとえば末っ子に譲り直す。現代ではとても認められない行為だが、家父長権がたいへんに強大だった中世にあっては、この「悔い返し」行為はなんの文句もなく認められた。鎌倉幕府は「問題なし」という判断だったし、幕府の法律である「御成敗式目」の20条にも「OK」と明示されている。

財産のもっとも大きなものは「家督」である。平安時代の後期などでは、男子はそれぞれに所領を分け与えられていたが、鎌倉時代も中期になると、「家督」に定められた男子が親の財産の主要部分を受け継ぐようになり、この趨勢(すうせい)は時代の流れとともに、定着していく。

以上まとめると、戦国時代では「家督」を定める権利は父親にあり、「家督」かそうでないかは、その子の将来に、良くも悪くも甚大な影響を与えた。

同時代の豊後。大友家の発展を現出した当主の義鑑(よしあき)は、五郎義鎮(よししげ)(のち宗麟(そうりん))を家督に据えたがこれを廃嫡し、聡明な塩市丸を後継者にしようと目論(もくろ)んでいた。本来はその行為は武家社会では正しい。だが、有能をもって知られる大友家臣団の面々は、それぞれの思惑に従って虚々実々の駆け引きを展開し、それが「二階崩れの変」という陰惨な事件に発展していく。

この本の興味深いところは、タイトルとされた「二階崩れ」があくまでも流れの一コマであって、本当は家臣たち相互の、手に汗握るギリギリの交渉を描いていることにある。主人公に据えられた吉弘鑑理(あきまさ)は「義の人」として造形される。義に即した彼の行動は多くの人を不幸にしながら、最後には受け入れられていく。それはまさに、一服の清涼剤たる武人の姿なのだ。
大友二階崩れ / 赤神 諒
大友二階崩れ
  • 著者:赤神 諒
  • 出版社:日本経済新聞出版社
  • 装丁:単行本(282ページ)
  • 発売日:2018-02-21
  • ISBN-10:4532171466
  • ISBN-13:978-4532171469
内容紹介:
日経小説大賞(選考委員:辻原登、髙樹のぶ子、伊集院静)受賞作。豊後の大友宗麟が世に出た政変を重臣達の視点で描く本格歴史小説!

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