ホームドラマに冒険活劇 皆でお宝を探し出せ!
待ってました! 先のお伊勢さま「おかげ参り」に続いて、今回は「こんぴらさま」だ!「こんぴらさま」とは讃岐(香川県)の金刀比羅宮(ことひらぐう)のこと。由緒あるお宮であったが、戦国時代の兵火により一たん荒廃。ところが江戸時代になるや、全国の民衆のたいへん熱い支持を得た。いってみれば「庶民派の神さま仏さま」であり、当時は「神仏習合」により象頭山金毘羅(ぞうずさんこんぴら)大権現と呼ばれた。「丸金か京六か」という言葉があったそうで、丸金こと金刀比羅宮は、京都六条の東西本願寺と並ぶ参詣のメッカであった。またこのお宮には伊勢神宮と同様に、代参犬、すなわち主人に代わってお参りする犬が多くやって来ていた。
江戸城大奥育ちの代参犬・翁丸(おきなまる)、気ままな遊び人の辰五郎、実の親に捨てられた三吉、婚家をいびり出されたお沙夜。三人と一匹は伊勢から讃岐へと旅する。辰五郎とお沙夜を父ちゃん母ちゃんと呼ぶ三吉がけなげで、母親役をしっかり務めるお沙夜が可憐(かれん)で、「やい辰五郎、てめえがしっかりしさえすりゃあ、良い家族が出来上がるじゃねえか。性根を据えろい、この唐変木!」と読者は幾度となく気をもむことになる。さて、彼らは本当の家族になれるのだろうか。それは読んでのお楽しみ。
今回はゲストが豪華である。歌川広重に良寛和尚、それに鼠小僧次郎吉とくる。金刀比羅宮には鼠小僧のお宝が眠っている。さあ、そいつを探し出せ、というのだが、タネ明かしがまた秀逸。ちょっとだけ紹介すると、ミイラが出てくるんだな。
コメディータッチのホームドラマに、ミイラ+お宝(気分はインディ・ジョーンズ?)の冒険活劇。それから忘れちゃならない名脇役、ワン公・翁丸。いやあ実に面白い。時を忘れて読みふけること請け合いの一冊!