書評

『修羅の宴』(講談社)

  • 2017/07/01
修羅の宴 / 楡 周平
修羅の宴
  • 著者:楡 周平
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(458ページ)
  • 発売日:2012-07-19
  • ISBN-10:4062177145
  • ISBN-13:978-4062177146
内容紹介:
バブル期に大銀行から出向し、専門商社社長になった高卒の男。その城に居座るには結果を出し続けるしかなかった。未踏のビジネスを開拓し、頭取からの汚れ仕事を引き受け、伸し上がる。地価も… もっと読む
バブル期に大銀行から出向し、専門商社社長になった高卒の男。その城に居座るには結果を出し続けるしかなかった。未踏のビジネスを開拓し、頭取からの汚れ仕事を引き受け、伸し上がる。地価も株価も天井知らずな狂乱の時代に蠢く、金だけを追い求める修羅たち。その宴は次第に、決して招いてはいけない男たちに巣くわれていく-。「週刊現代」連載、著者ならではの筆致で迫る、剥き出しの人間ドラマ。渾身の傑作企業小説。

人生と経済の盛衰を重ねる

これは、第一次オイルショックさなかの1974年から、バブル景気崩壊までの約20年間を疾走する、重厚長大な経済小説である。

いづみ銀行の取締役、滝本哲夫は業績の悪化した繊維商社、浪速物産の立て直しを頭取の鏑木修次郎に命じられ、社長として出向する。高卒入社の滝本は、銀行にもどっても頭取にはなれないことを自覚し、浪速物産を自分の牙城(がじょう)にする決心を固める。

その結果、わずか2年で再建に成功した滝本は、浪速物産をわがものにしようと、さまざまな手段を弄(ろう)して業態を広げる。そのため、愛人の小料理屋の女将(おかみ)、下村桐子に因果を含めて、自社の労組幹部の内輪話を、報告させたりもする。不動産や、町金融まがいの仕事にも手を出し、着々と地盤を固めていく。その、えげつないほど強引なやり口が、生きいきとした大阪弁の会話で進められ、滞るところがない。

バブル景気に乗って、地上げをてこにさらに大きなプロジェクトを計画中、滝本は思わぬ落とし穴にはまる。新たに、役員として迎えた真田の口車に乗り、多大の欠損を出してしまうのだ。このあたりのいきさつは、ある程度専門的な知識を必要とするが、著者はそれを分かりやすく会話で処理し、疾走感を失わない工夫をしている。

若い女に取り込まれ、長年の愛人桐子と別れたあと、滝本の運勢もしだいに傾き始めて、ついに経営に破綻(はたん)をきたす。その上、目をかけた部下にも反旗をひるがえされ、取締役会で社長を解任されてしまう。さらに、自社株の買い占め、粉飾決算などが罪に問われ、懲役7年の判決を受ける。その、年老いた孤立無援の滝本に、手を差し伸べようとする桐子に、読者はいささかの救いを感じるだろう。

この小説は、激動期を生きた滝本個人の栄枯に託して、日本経済そのものの盛衰を描いた、渾身(こんしん)の力作である。
修羅の宴 / 楡 周平
修羅の宴
  • 著者:楡 周平
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(458ページ)
  • 発売日:2012-07-19
  • ISBN-10:4062177145
  • ISBN-13:978-4062177146
内容紹介:
バブル期に大銀行から出向し、専門商社社長になった高卒の男。その城に居座るには結果を出し続けるしかなかった。未踏のビジネスを開拓し、頭取からの汚れ仕事を引き受け、伸し上がる。地価も… もっと読む
バブル期に大銀行から出向し、専門商社社長になった高卒の男。その城に居座るには結果を出し続けるしかなかった。未踏のビジネスを開拓し、頭取からの汚れ仕事を引き受け、伸し上がる。地価も株価も天井知らずな狂乱の時代に蠢く、金だけを追い求める修羅たち。その宴は次第に、決して招いてはいけない男たちに巣くわれていく-。「週刊現代」連載、著者ならではの筆致で迫る、剥き出しの人間ドラマ。渾身の傑作企業小説。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2012年9月23日

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