書評

『草を褥に―小説牧野富太郎』(小学館)

  • 2017/10/13
草を褥に―小説牧野富太郎  / 大原 富枝
草を褥に―小説牧野富太郎
  • 著者:大原 富枝
  • 出版社:小学館
  • 装丁:単行本(229ページ)
  • ISBN-10:4093433518
  • ISBN-13:978-4093433518
「草を褥(しとね)に木の根を枕、花と恋して九十年」などと、自らをざれ歌に表現した牧野富太郎は、まさに植物学研究のためにこの世に生まれたような人だった。しかし、その牧野を支えるために生まれてきたような、妻寿衛子のことはほとんど知られていない。

牧野に関する従来の伝記とは異なり、本書は妻の苦闘にスポットをあてている。経済観念ゼロの夫にかわって質屋に通い、乳飲み子をかかえながら借金取りを撃退したり、待合を経営したりする。過労がたたって東京帝大の付属病院に入院するが、臨終のさいにも入院費が切れたため、情け容赦もなくシーツにくるまれ、ベッドから放り出されてしまった。

著者の大原富枝は昨年亡くなった。父親が少年時代、郷里の高知県佐川町の郷校で、牧野から教えをうけたことがあるという。最晩年の著者の、父祖への思いが牧野一族への関心と交錯し、単なる伝記以上に感銘深いノンフィクションとなっている。
草を褥に―小説牧野富太郎  / 大原 富枝
草を褥に―小説牧野富太郎
  • 著者:大原 富枝
  • 出版社:小学館
  • 装丁:単行本(229ページ)
  • ISBN-10:4093433518
  • ISBN-13:978-4093433518

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2001年4月8日

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