書評

『草を褥に―小説牧野富太郎』(小学館)

  • 2017/10/13
草を褥に―小説牧野富太郎 / 大原 富枝
草を褥に―小説牧野富太郎
  • 著者:大原 富枝
  • 出版社:小学館
  • 装丁:単行本(229ページ)
  • 発売日:2001-04-10
  • ISBN-10:4093433518
  • ISBN-13:978-4093433518
内容紹介:
「植物界の巨人」光と翳の実生涯。書簡で初めて明かされる「奔放」と「純愛」。自らを「植物の精」と呼び、植物分類学に生涯を捧げた牧野富太郎博士。この稀代の学者と妻・寿衛子の波乱に富む生涯の詳細記録―。『婉という女』から40年。大原文学の最終到達点。
「草を褥(しとね)に木の根を枕、花と恋して九十年」などと、自らをざれ歌に表現した牧野富太郎は、まさに植物学研究のためにこの世に生まれたような人だった。しかし、その牧野を支えるために生まれてきたような、妻寿衛子のことはほとんど知られていない。

牧野に関する従来の伝記とは異なり、本書は妻の苦闘にスポットをあてている。経済観念ゼロの夫にかわって質屋に通い、乳飲み子をかかえながら借金取りを撃退したり、待合を経営したりする。過労がたたって東京帝大の付属病院に入院するが、臨終のさいにも入院費が切れたため、情け容赦もなくシーツにくるまれ、ベッドから放り出されてしまった。

著者の大原富枝は昨年亡くなった。父親が少年時代、郷里の高知県佐川町の郷校で、牧野から教えをうけたことがあるという。最晩年の著者の、父祖への思いが牧野一族への関心と交錯し、単なる伝記以上に感銘深いノンフィクションとなっている。

【文庫版】
草を褥に 小説牧野富太郎 / 大原 富枝
草を褥に 小説牧野富太郎
  • 著者:大原 富枝
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:文庫(213ページ)
  • 発売日:2022-11-08
  • ISBN-10:4309419313
  • ISBN-13:978-4309419312
内容紹介:
希代の植物学者・牧野富太郎を支えるために妻・寿衛子は厳しい生活に耐え抜き、子どもを育てた。二人の素顔に迫る評伝風小説。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

草を褥に―小説牧野富太郎 / 大原 富枝
草を褥に―小説牧野富太郎
  • 著者:大原 富枝
  • 出版社:小学館
  • 装丁:単行本(229ページ)
  • 発売日:2001-04-10
  • ISBN-10:4093433518
  • ISBN-13:978-4093433518
内容紹介:
「植物界の巨人」光と翳の実生涯。書簡で初めて明かされる「奔放」と「純愛」。自らを「植物の精」と呼び、植物分類学に生涯を捧げた牧野富太郎博士。この稀代の学者と妻・寿衛子の波乱に富む生涯の詳細記録―。『婉という女』から40年。大原文学の最終到達点。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2001年4月8日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

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