書評

『宝島』(講談社)

  • 2018/11/02
宝島 / 真藤 順丈
宝島
  • 著者:真藤 順丈
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(541ページ)
  • 発売日:2018-06-21
  • ISBN:4065118638
内容紹介:
さぁ、起きらんね! 日本の宝の島を、三人の幼馴染が駆け抜ける。超弩級の才能が放つ青春と革命の一大叙事詩!!

濃密な“沖縄の叙事詩”

「さあ、起(う)きらんね。そろそろほんとうに生きるときがきた――」

沖縄の戦後と真っ向勝負する真藤順丈の大作『宝島』は、こんな印象的な台詞(せりふ)で幕を開ける。発言の主は、弱冠20歳のコザの英雄、オンちゃん。米軍施設から物資を盗み出す「戦果アギヤー」(戦果をあげる者)のリーダーだ。

戦後、大阪砲兵工廠の焼け跡で、警察の目をかすめ、鉄くずを回収して暮らした「アパッチ族」は、開高健『日本三文オペラ』などの題材になったが、戦果アギヤーはさしずめその沖縄版か。ただし、こちらの相手は、強大なアメリカ軍。にもかかわらず、オンちゃんたちは連戦連勝、奪った医薬品や食料や衣類は地元の貧乏人に惜しみなく分け与えた。いわば、沖縄の義賊。コザの女たちは、みんなオンちゃんに恋をしていた。

そして、1952年夏のある夜、オンちゃんが満を持して選んだ標的が、嘉手納空軍基地。周到な準備のかいあって物資の運び出しに成功するが、その瞬間、闇を切り裂いて警笛が鳴り響き、彼らは追われる身に…。

と、ここまでが話のプロローグ。この夜を最後にオンちゃんは忽然(こつぜん)と姿を消す。それにかわって小説の軸になるのは、幼なじみの3人組。嘉手納基地侵入にも加わった19歳のグスクと、オンちゃんの弟レイ、それに長身黒髪の美少女ヤマコ。この3人の20年が、本土復帰へと向かう激動の沖縄史を背景に、力強く荒々しく語られる。警官になる者、ヤクザになる者、教師になる者。彼らの人生が米軍施政下の沖縄の歴史と交錯する。

相次ぐ米兵の凶悪犯罪。佐藤・ニクソン共同声明。コザ市近くの米軍施設で起きた毒ガス漏洩(ろうえい)事件。そして、溜(た)まりに溜まったエネルギーが一気に爆発する、1970年12月20日のコザ暴動…。

米軍統治に抵抗をつづけた沖縄人民党の瀬長亀次郎や、教師から琉球主席となった屋良朝苗など実在の人物も登場するが、主役はあくまでも戦果アギヤーの若者たち。“生々流転する沖縄の叙事詩”に身を委ねる濃密な読書体験、怒濤(どとう)の540ページだ。
宝島 / 真藤 順丈
宝島
  • 著者:真藤 順丈
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(541ページ)
  • 発売日:2018-06-21
  • ISBN:4065118638
内容紹介:
さぁ、起きらんね! 日本の宝の島を、三人の幼馴染が駆け抜ける。超弩級の才能が放つ青春と革命の一大叙事詩!!

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初出メディア

産経新聞

産経新聞 2018年7月22日

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