リニア計画は深刻なエネルギー問題を抱えている。そして進行中の大規模環境破壊でもある。にもかかわらず、虚妄に満ちた「6000万人メガロポリス」構想、原発稼働の利害との結合、大深度法の横暴など、計画は目的と手段の両面で横車を押すようにして推進されてきた。中枢レベルの政治権力の私物化や、ナショナリズムと科学技術の結びつきがそれを可能にしてきたことも、本書は明らかにする。
最終節は、この暴挙の根を掘り下げる。日本の戦後の産業経済は、旧体制から引き継いだ諸条件を足場に経済成長を成し遂げた。そこで強化された既得権益と前世紀的な成長への醒めない夢が、時代錯誤の巨大プロジェクトの温床となっている。3.11以後/コロナ禍以後の、持続可能性を追求すべき世界で、なお私たちはそれらを延命させるのか? 決然と、それを問う書である。
目次
序章 なぜいまリニア新幹線を問うのか(リニア問題とは何か、その概略;リニアをめぐるこれまでの経緯)
第1章 リニアは原子力発電を必要とする(リニアに必要なエネルギー(電力)
リニアの構造と技術的な問題
超伝導リニアをめぐる問題
リニアの運転と原子力発電)
第2章 6000万人メガロポリスの虚妄(新幹線が一極集中をもたらした;リニアによる一極集中の加速;新幹線幻想からの決別)
第3章 リニアをめぐるいくつかの問題(環境破壊そして残土の問題;大深度地下にまつわる問題;リニア中央新幹線計画の闇;技術とナショナリズムの影)
第4章 ポスト福島、ポスト・コロナ(コロナ後のリニアを見る目;集中と分散、そして脱成長;脱成長と定常型社会の展望;高度成長の実相を踏まえて)
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