メールマガジン「週刊ALL REVIEWS」、100号記念!鹿島 茂さんコメント

  • 2021/05/11

「週刊ALL REVIEWS」100号到達祝辞――鹿島 茂

メールマガジン「週刊 ALL REVIEWS」100号到達おめでとうございます。

この場をお借りして執筆を担当されているメンバーの方々、およびメール・マガジン「週刊 ALL REVIEWS」をメールマガジンの登録者として支えておられる方々にこころからの賛辞をお送りしたいと思います。

「週刊 ALL REVIEWS」は2018年の年頭につくられた月額制ファンクラブ「ALL REVIEWS友の会(以下、「友の会」)」の会員有志が2年前の2019年6月18日からボランティアで始めた無料メール・マガジンです。

毎週火曜日に、担当会員が前週にALL REVIEWSから配信された1週間分の書評をダイジェストすると同時に取り上げられた1冊についてのエッセイを巻頭言として添えるというかたちを取っています。

アイディアは「考えて行動するファンクラブ」と銘打った「友の会」の例会でディスカッションが行われたさい、「毎日、書評がTwitterやFacebookで配信されても忙しくて読む暇がない読者がいるはずだから、そうした読者のために1週間分の書評をまとめてメール・マガジンで紹介してはどうか」という提案がなされ、これが有志たちによって実現の運びとなったのです。

私はいちおうALL REVIEWSの主宰者という立場なので、最初のうちは「週刊 ALL REVIEWS」を受け取ると少し厳しくチェックするつもりでいたのですが、すぐに、その必要はまったくないことに気づきました。それどころか、毎週、火曜日の配信が待ち遠しくなってきました。なぜなら、会員有志が持ち回りで書いている巻頭エッセイのレベルがどんどん高くなってきて、いまでは有料にしてもメルマガの登録者は落ちないのではないかと思えるほどになったからです(ご安心ください。有料化はありません)。

こう感じているのは私だけではありません。その証拠に、メルマガの登録者はどんどん増えていって、2020年8月4日についに1000名を超え、いまなお増加しつつあります。私はネットには詳しくないのですが、事情に通じた人の話ではこれは大変な数字だそうです。

しかし、いくら私がこう強調しても「週刊 ALL REVIEWS」の充実ぶりを容易には信じられない方もいらっしゃるかもしれません。そうした方は、巻頭言総集編がnoteで公開されていますから、ぜひ閲覧されていただきたいと思います。論より証拠なのです。

週刊ALL REVIEWS巻頭言総集編|ALL REVIEWS 友の会 公式|note
https://note.com/allreviewsjp/m/m33550ebf395e

では、いったいどうして、「週刊 ALL REVIEWS」が100回まで続き、しかもその内容が回を追うごとに充実してきたのでしょうか?この場を借りてその理由について考えてみたいと思います。というのも、同じような試みをなさっていられる方々にとって、おおいに参考になるはずだからです。

思うに最大の理由は初期の制度設計が優れていたことに尽きます。つまり、ボランティアが持ち回りで巻頭エッセイを担当するというシステムを考えるうえで、どうすれば永続化できるのか、最初からそれが制度的に考えられていたからこそ、100号まで到達できたのです。なお、私はALL REVIEWSの主宰者ではありますが、「友の会」の活動にはノータッチであり、「週刊 ALL REVIEWS」の制度設計にはまったく関与していません。「週刊 ALL REVIEWS」の初期設定が優れているとしたら、それはこの「制度」の設計にかかわった立ち上げメンバーの力によるものなのです。

それでは、以下に初期設定の優れた点はどこにあったのかを考えてみましょう。

①編集長というポジションを設けたこと
これは当たり前のことのように思われるかもしれませんが、意外に気づかれない重要な点です。しかし、それにはまず、人はなぜ書くのか、いや書き続けるのかという問題を考えなければなりません。

もちろん、書きたいから書く、書くのが楽しいから書くのでしょうが、私の長年の経験からいうと、これは半分の真理でしかありません。本当のことをいうと、書くのは「締め切り」があるからです。私はすでに100冊以上の本を上梓している物書きですが、本質はひどい怠け者で、やりたくないことはすべて先延ばしにしてしまう怠惰な人間なのです。もし、この世に締め切りというものがなかったら、あるいは1冊も本を書かなかったかもしれません。そう、締め切りがあったからこそ、ない知恵を搾って書き続けてこれたのです。締め切りは偉大なり、です。

しかし、締め切りというものがあったとしても、「そろそろ締め切りが近づいていますよ。いついつまでに原稿をあげてください」と催促する編集者というものが存在しなかったら、締め切りはないも同然です。しかし、出稿の催促というのは編集者にとってじつに難しいもので、ときには書き手の感情を害してしまうことも少なくないのです。

「週刊 ALL REVIEWS」には編集者はいませんが、この締め切り催促係といういやな役割を編集長として引き受けてくださったhiroさんがいらしたため、すべてがうまく運んだのだと思います。hiroさんは、ともすれば勇気がくじけそうになる担当メンバーを励ましながらじつに巧みに出稿を促されたのではないかと推測します。「週刊 ALL REVIEWS」がこれだけ続いたのも名編集長hiroさんの尽力あってのたまものです。ちなみに、hiroさんは編集経験などまったくない友の会メンバーです。

②メール・マガジンという「古い」メディアをあえて用いたこと
書き手にとって、「書く」最大の動機となるのは、書いたものを読んで反応してくださる読者の存在です。読者の反応がたとえ間接的にでも伝わってくることが重要なのです。この点、「週刊 ALL REVIEWS」の担当メンバーが異口同音におっしゃっているように、メール・マガジンは意外にも読者からの反応が伝わりやすいメディアだと思います。いまでは、双方向性を謳うたくさんのメディアがありますが、双方向性といっても、あまりに不特定多数に開かれたメディアであると。その不特定多数の読者がほとんど反応せず、案外、片方向性に終わってしまうことが少なくないのです。いっぽう、メール・マガジンは無料申し込みとはいえ、読者の「参加意志」がはっきりとした数字で表されますから、書き手は読者からのレスポンスをはっきりと感じとることができるのです。この点、メール・マガジンは読書と書評という活字メディアに属するものを対象としたALL REVIEWSと親和的だったのかもしれません。

③その週にアップされた書評で触れられた本のうち、最低「どれか1冊」について語るという「緩い縛り」
エッセイを書くときに最も困るのは、どんなことについてでもいいから書いてくださいと注文されることです。完全な自由ほどエッセイの書き手を困惑させるものはありません。その反面、注文が細かすぎるのも困ります。あれもこれも入れてくださいと言われると、「それなら自分で書いたら」と言いたくなるものです。一番好ましいのは、テーマを1つだけ示されることです。なぜなら、自分の頭にあった漠としたイメージが提示されたテーマによって具体的なかたちになって現れることが少なくないからです。

こうした意味において、その週の本全部ではなく、最低どれか「1冊」という「緩い縛り」は制度設計として絶妙だと思いました。これなら、担当となった週の書評で取りあげられた本の中には必ずなにか書き手を触発するものがあるはずです。この「緩い縛り」によって、自分でも気づかなかったものがはっきりとしたかたちとなって現れてくることが多いようです。

④4、5人で持ち回りという適度な頻度
ブログを持たれている方ならだれでも経験されたことでしょうが、1週間に1回の原稿アップというペースは最初は楽なように思えてもいざ実際にやってみるとかなりタイトだと分かってきます。1週間などすぐに経ってしまい、アップしようと思ってもその余裕がないため、たちまちペース・ダウンとなり、そのうち1カ月に1度、最後はブログ閉鎖という事態に至るのです。

この点、4、5人で持ち回りで四週間に1度担当が回ってくるという頻度はじつに的確な制度設計であったと感じました。

また、4、5人で持ち回りという「制度」が、中世キリスト教の共住修道院を成り立たせていたものと同じ効果を生んだのではないかと想像します。つまり、聖アントニウスのように1人で砂漠に隠棲しようと思うとかえってうまくいかないので、小人数で辺地に引きこもったら聖書も仲間と読んだほうが理解が進むし、相互援助と相互監視で共同体の運営が非常にうまくいったというのが共住修道院の起源なのですが、4、5人で持ち回りという制度が共住修道院的な「共同体」を支えたのではないかと思います。

⑤「好きな本について語るという行為」が担当メンバーにとって「読む」から「書く」への橋渡しとして機能した
「週刊 ALL REVIEWS」の担当メンバーは現在、編集長のhiroさん、Fabioさん、小島ともみ(朋)さん、山本陽子さん、やすだともこさん(98号から参加)の5人ですが、山本さん、小島さんを除くとみなプロの物書きの経験はありません(やすださんは元編集者)。しかし、みなさん、本を読むのが好きということにかけてはだれにも負けないという自負の持ち主です。いいかえると、本を読むという喜びを自分だけのものとせずに他の人と共有したいという思いが「週刊 ALL REVIEWS」で「書く」ことへの敷居を低くし、1号分の担当という重荷を軽くしたにちがいありません。ほんとうに、号を追うごとに巻頭エッセイのレベルは高くなっているのです。

最後になりましたが、「週刊 ALL REVIEWS」第100号到達に対してもう一度、今度はフランス語で
MES FELICITATIONS!

鹿島 茂

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