そんな中国料理について、食事のマナーや食材、郷土料理やレシピまで、イラストで簡単に知ることのできる書籍『知っておきたい! 中国ごはんの常識』から、本文の一部を抜粋して公開する。
中国料理とは
中国では、街角でも職場でも家庭の中でも、「ごはん食べた?」としょっちゅう声をかけ合います。このシンプルな挨拶から、中国では日々の生活の中で食事がどんなに大切にされているかがわかります。中国では「食事をする」ことは「栄養をとる」という本質的な役割のほかに、もっと大切な意味があります。食事は、社会に溶け込んで人びとと交わり、相手に愛情や尊敬の念を伝える手段なのです。食事は、人と顔を合わせ、和気あいあいと歓談するひととき。
肉や野菜を取り分けるちょっとした仕草は、相手に対する愛情や関心のサインなのです。
調和を追求する
祝いの席であろうと、家庭での日々の食事であろうと、食事のメニューには必ず料理の風味や食感、彩りがバランスよく調和していることに細心の注意が払われます。レストランでの祝いの食事では、冷たい最初の一品が供されたあとに炒め料理や蒸し料理、あるいは煮込み料理が用意されます。なめらかな食感の料理が出されれば、その次は必ず対照的なカリカリとした食感の一皿が出されます。タレのかかっていない料理の次は、タレの味を楽しむ一皿、香辛料の利いた料理の後にはさわやかな味わいの料理や甘いデザートでバランスがとられます。
家庭での簡単な食事でも必ず調和が大切にされます。3人家族の場合、毎日の食事はたいてい一汁三菜(三菜一湯/サンツァイイータン)です。たとえば、肉料理が一皿と野菜料理が二皿、あるいは野菜料理と豆腐か卵の料理がそれぞれ一皿ずつ、そしてスープで締めくくられます。
食品とそれを食べる人、食べる季節との調和にも気をくばります。暑い時期には、ほてった身体を鎮めて心を落ち着かせるために、あっさりとしたさわやかな食べ物を多く食べます。冬には、陽の食を使ったスープや煎じ茶で冷えた身体を温めます。
[書き手]マルゴ・ジャン
北京生まれ、北京育ち。幼い頃から母親と祖母に美味しい家庭料理の秘訣を教わる。パリ第7大学で言語学の博士号を取得。2008年、彼女のシンプルで本格的な中国料理を伝えるために料理ブログを立ち上げ、瞬く間にフランス語圏のブログ界における中国料理の第一人者としての地位を確立した。現在は中国に戻り、個人向けの料理レッスンや専門家向けのコンサルティングに、情熱を注いでいる。