一代男新考
- 著者:森 銑三
- 出版社:冨山房
- 装丁:-(294ページ)
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一代男全八巻の内には、西鶴はたゞの一回も「汝」の語を使用することをしてゐない。「汝」は純正な国語ではあるけれども、その語の持つ感じが固くて、日常語にはなつてはゐない。俗言平語を以て一代男を書かうとした西鶴が、この語を使用せぬのは当然のことだつたと考へられる。然るに諸艶大鑑以下作品の作者達は、西鶴の用語法を学ばうともせずに、蕪雑な文章を平気で書いてゐるのであり、「汝」の語をも殆ど毎作品に使用してゐるのである。
太夫殿の声として、おれは胡桃あへの餅を飽くほど、とあれば、また望み替へて、鷄の骨抜き、或は山の芋の煮締め、土くれ鳩(の)芹焼、有平糖、生貝のふくら妙りを川口屋の帆掛船の重箱に一杯、と思ひ思ひに好まるゝこそをかし
遊び女ながら美食好み、鶴屋の饅頭、川口屋の蒸蕎麦、小浜屋の薬酒、天満の大仏餅、日本橋の釣瓶鮨、椀屋の蒲鉾、樗木筋の仕出し弁当