読書日記

渡辺明日香『東京ファッションクロニクル』、マガジンハウス 『WHAT'S NEXT? TOKYO CULTURE STORY』、中村のん『70’HARAJUKU』

  • 2019/12/01

蘇るファッション

読書の秋、という言葉を聞くことは少なくなってきましたが、寒くなるとおしゃれ心が刺激される、という人は多いものです。中高年になると、自らの来し方を振り返りたくなってくるものですが、それはファッション面でも同じこと。<1>渡辺明日香『東京ファッションクロニクル』(青幻舎・3,024円)は、1950年代から現在まで、戦後の東京のストリートファッションを振り返る、という書。

洋装文化がどっと入ってきた50年代、ミニスカート、アイビー、みゆき族の60年代…といったところは、「へー」という感じですが、70年代後半からの、竹の子族等の出現くらいからは、私も「知ってる!」と、嬉(うれ)しくも恥ずかしい気分に。街で撮ったたくさんのスナップ写真とともに紹介されるストリートファッションの歴史を眺めることは、自分自身のファッションの歴史を振り返る作業にもなります。そして現在は「新しいファッションが登場しない」という新しい時代に突入、という指摘に、移りゆく世を感じるのです。

東京ファッションクロニクル / 渡辺 明日香
東京ファッションクロニクル
  • 著者:渡辺 明日香
  • 出版社:青幻舎
  • 装丁:ペーパーバック(200ページ)
  • 発売日:2016-09-01
  • ISBN-10:4861525489
  • ISBN-13:978-4861525483

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

そこには70年代から原宿がファッションの発信基地になってきたことも記されていますが、70年代の原宿を起点として東京のファッションとカルチャーを振り返るのが<2>『WHAT'S NEXT? TOKYO CULTURE STORY』(マガジンハウスムック・1,650円)。

何もない場所だった、原宿。しかしセントラル・アパート、カフェの「レオン」といった核となる施設があったことによって、やがてファッション関係者等が集まる地となっていきます。今では全国に存在するBEAMSが原宿に産声をあげたのは1976年。そして雑誌「POPEYE」の創刊も76年。この年は日本のカジュアルファッション元年だったのかもしれません。

WHAT'S NEXT? TOKYO CULTURE STORY /
WHAT'S NEXT? TOKYO CULTURE STORY
  • 出版社:マガジンハウス
  • 装丁:ムック(207ページ)
  • 発売日:2016-10-31
  • ISBN-10:4838751583
  • ISBN-13:978-4838751587
内容紹介:
東京のファッション、ミュージック、カルチャーの
1976年から2016年までの軌跡をアーカイブしました。
次の時代につながるカルチャーと出会う本、
「WHAT’S NEXT?」。

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黎明(れいめい)期の原宿の姿を私は知りませんが、それを今に蘇(よみがえ)らせるのが<3>中村のん編『70'HARAJUKU』(小学館・1,296円)。神宮前交差点には横断歩道がなく、人通りも少ない当時の表参道。「レオン」に集まっていた、モデル、スタイリスト、ミュージシャン…といった、格好いい人達。そんな"格好いい人達"の仲間うちであったであろうフォトグラファー達によって撮られたモノクロ写真の数々は、自分達の手でファッションという世界を拓(ひら)いていこうとする若者達の勢いに溢(あふ)れているのです。

70’HARAJUKU / 中村 のん
70’HARAJUKU
  • 著者:中村 のん
  • 出版社:小学館
  • 装丁:ムック(1ページ)
  • 発売日:2015-08-25
  • ISBN-10:4091046770
  • ISBN-13:978-4091046772
内容紹介:
ティーンエイジのまなざしの原風景・原宿 若者文化の最先端の街として、今も世界の注目を浴びる原宿。そのルーツは、70年代にさかのぼります。70年代、日本のスタイリストの草分け的存在で… もっと読む
ティーンエイジのまなざしの原風景・原宿

若者文化の最先端の街として、今も世界の注目を浴びる原宿。そのルーツは、70年代にさかのぼります。70年代、日本のスタイリストの草分け的存在であり、「表参道のヤッコさん」としても有名な高橋靖子氏のアシスタントだったスタイリストの中村のん氏が、70年代原宿の洗練された自由な雰囲気を今に伝えたいという思いから、友人の写真家たちに声をかけて70’sの普段着の原宿のスナップショットが集まりました。9名の写真家から届いたモノクロ写真をには、今は大御所になった人たちの飾らない姿や、当時の風俗、懐かしい街の風景などが写り込んでいます。70年代の息吹きを、この閉塞した日本に吹き込みたい」という中村のん氏の思いに共感して、今や巨匠と呼ばれる9名の写真家から提供された写真は、70年代OBの人だけでなく若い人にも、何かを始めたくなるような、心に火を灯ようなバイブレーションが溢れています。


【編集担当からのおすすめ情報】
今や巨匠と呼ばれる9名の写真家のモノクロ写真に流れる時間の豊かさ。友達へのギフトにぴったりな価格。何よりも70’sのスピリットがそのまま伝わってくるバイブレーションが、ワクワクさせてくれます。

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初出メディア

東京新聞

東京新聞 2016年12月

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