図版に掲げた2枚の素描。一枚は1829年にアングルが描いた「ルイ=フランソワ・ゴディノ夫人」の肖像画。一枚は、アンディー・ウォーホルの「ケルン大聖堂」の素描です。(ALL REVIEWS事務局注:図版はございません)
画家、デイヴィッド・ホックニーは「二枚の絵には共通点がある」といってます。線が同じだというんです。
ウォーホルの素描は、カンヴァスにプロジェクターで映写した写真をなぞって描いたものだというのは、絵を描く人なら一目でわかります。
そして、言われてみれば、アングルのデッサンの、とくに服を描いている線には、たしかによく似た特徴が見てとれる。
つまり、共通するのは写真をなぞっている線だった。
ところで1829年には、まだ写真は発明されていない、から無論のことプロジェクターがあるわけもない。
この十年後の1839年に写真は誕生します。ダゲレオタイプの発明です。
何故、発明もされていない写真を、アングルはなぞることができたのか?
ナゾは、この方向からではなく、あまりにも、超人的に正確な、アングルのデッサンを
「いったいどうやったら、こんなふうに描けるんだろ?」
と同業者としてホックニーがいぶかるところから始まった。
そうして、このナゾは、とんでもないところまで、我々を連れていく。面白いです。絵画史を塗り替える画期的な本。
【普及版】