書評
『人生は楽ではない。そこが面白いとしておく。―武者小路実篤画文集』(求龍堂)
私は武者小路実篤の絵を、いくぶん軽視していて、今回このようにとりあげるについても、「近頃、あの野菜の絵を見なくなったな」と思ったらひさしぶりに出ているので、面白半分に買ってきたのだ。
そして、最初から一枚ずつ、見ていったらちょっと考え方が変わった。
とても面白い絵か、といえばそうは面白くないのだ。が、よく見ると、ていねいに、とてもよく見て描いてあるというのがわかる絵で、そして、それが味わいになってくるような絵だ。
私は、武者小路実篤が、描き慣れたカボチャやジャガイモをどしどし描きとばして、その横にもっともらしいことを書いているのだとばかり思っていたが、なかなかそんなものではない、というのがわかった。
武者小路実篤は、カボチャやジャガイモを描くのに、その都度、それを目の前に配置して、じっくり見つめ、下書きをせずじかに描いたそうだ。
武者小路実篤は「何處が美くしいか知らねども南瓜と馬鈴薯は我が画の先生」と、カボチャとジャガイモの絵の余白に、字で書いている。
「馬鈴薯はマチスより美しい」と言い、「僕はあたりまえの事きり言いたくない」と書いた。
「見るとかきたくなる。かきたくなればかくなり」と、絵の横に発表している。
私は何度も頁を繰っている。
そして、最初から一枚ずつ、見ていったらちょっと考え方が変わった。
とても面白い絵か、といえばそうは面白くないのだ。が、よく見ると、ていねいに、とてもよく見て描いてあるというのがわかる絵で、そして、それが味わいになってくるような絵だ。
私は、武者小路実篤が、描き慣れたカボチャやジャガイモをどしどし描きとばして、その横にもっともらしいことを書いているのだとばかり思っていたが、なかなかそんなものではない、というのがわかった。
武者小路実篤は、カボチャやジャガイモを描くのに、その都度、それを目の前に配置して、じっくり見つめ、下書きをせずじかに描いたそうだ。
武者小路実篤は「何處が美くしいか知らねども南瓜と馬鈴薯は我が画の先生」と、カボチャとジャガイモの絵の余白に、字で書いている。
「馬鈴薯はマチスより美しい」と言い、「僕はあたりまえの事きり言いたくない」と書いた。
「見るとかきたくなる。かきたくなればかくなり」と、絵の横に発表している。
私は何度も頁を繰っている。
朝日新聞 2006年05月28日
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