書評
『赤い雪 普及版』(青林工藝舎)
勝又進作品集『赤い雪』が選りすぐりの短編をあつめて上梓された。
すべて20ページ前後の短編マンガ十編だが、それぞれのマンガにたっぷりと時間が充実していて、読後、一編ずつが二時間映画を見たようなボリュームで思い出される。
忘れていた記憶がたぐりよせられたように、その思い出が切実なのは、解説で呉智英氏が見事に指摘したように、近代化・均質化の強大なローラーに押しつぶされる前の、日本人の生き方が見事に描かれているからに違いない。
いま、昭和30年代をモチーフにした映画や、博物館や、インテリアが、若い人の間で人気である。もの珍しさもあるだろうが、そこに滲み出てくるものに実は気がついているのだと私は思う。
昭和30年代に勝又進は東北で牛追いをする少年だった。そして昭和40年代には、東京で原子核物理学の将来を嘱望される研究修士であって「ガロ」のマンガ家だった。
実は昭和30年代まで日本人は土俗的な生き方を完全に手放したわけではなかった。勝又さんの描いたマンガ、これから描こうとしているマンガの意義が、この作品集を見れば感じとれるはずだ。理屈ではなく素直な感動として。
沢山の人に読んでほしい。
 すべて20ページ前後の短編マンガ十編だが、それぞれのマンガにたっぷりと時間が充実していて、読後、一編ずつが二時間映画を見たようなボリュームで思い出される。
忘れていた記憶がたぐりよせられたように、その思い出が切実なのは、解説で呉智英氏が見事に指摘したように、近代化・均質化の強大なローラーに押しつぶされる前の、日本人の生き方が見事に描かれているからに違いない。
いま、昭和30年代をモチーフにした映画や、博物館や、インテリアが、若い人の間で人気である。もの珍しさもあるだろうが、そこに滲み出てくるものに実は気がついているのだと私は思う。
昭和30年代に勝又進は東北で牛追いをする少年だった。そして昭和40年代には、東京で原子核物理学の将来を嘱望される研究修士であって「ガロ」のマンガ家だった。
実は昭和30年代まで日本人は土俗的な生き方を完全に手放したわけではなかった。勝又さんの描いたマンガ、これから描こうとしているマンガの意義が、この作品集を見れば感じとれるはずだ。理屈ではなく素直な感動として。
沢山の人に読んでほしい。
朝日新聞 2005年11月20日
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