書評

『モービー・ディック航海記』(ソニーマガジンズ)

  • 2022/05/08
モービー・ディック航海記 / たむら しげる
モービー・ディック航海記
  • 著者:たむら しげる
  • 出版社:ソニーマガジンズ
  • 装丁:単行本(96ページ)
  • 発売日:2005-04-01
  • ISBN-10:4789725448
  • ISBN-13:978-4789725446
内容紹介:
少年時代、誰もが夢想したアドヴェンチャー・ワールドへ
科学者の叔父が遺してくれた鯨型小型潜水艦なるもの。小さな瓶入りのそれを指示通りに飼育していくと、不思議なことに巨大な潜水艇モビー・ディックに成長する。愛猫とともに乗り込み、大海へと旅たつ。ジャングル、宇宙、さらには子どものころの甘い記憶の中へと旅はひろがる。たむらしげるのファンタジーの真骨頂。
作者のたむらしげる氏はイラストレーター、絵本作家、マンガ家で映像作家。

それぞれの分野で、つねに完成度の高い一流の仕事を残している。本書『モービー・ディック航海記』は、児童向けの絵本のスタイルでつくられているけれども、文章も絵もいわゆる児童書風の遠慮会釈が一切されていない。

主人公は七十二歳の老人。いわばその七十二歳の老人がコドモの頃に読んだ絵本を、七十二年分の知性で読み返しているような絵本である。

奇想天外で荒唐無稽な、楽しい絵本世界の話法で、しかし楽しいだけでない「人生」を知り尽くしてしまった老人のための絵本。

しかし、それはおそらく、コドモにとっても、すばらしい絵本であるのだ。

コドモにはむずかしい、オトナ向けの言い回し、というのはたしかにある。

それから、コドモには味わえない、オトナっぽい絵の味わい、というものもたしかにある。しかしコドモは、スグにはわからなくても、深いところでそれを受けとめる。

作者は、上品で美しく、可愛い、いつものたむらしげるスタイルにビターなオトナの味わいを含ませて、新しい色彩とマチエールの、すばらしい作品世界を創りだした。
モービー・ディック航海記 / たむら しげる
モービー・ディック航海記
  • 著者:たむら しげる
  • 出版社:ソニーマガジンズ
  • 装丁:単行本(96ページ)
  • 発売日:2005-04-01
  • ISBN-10:4789725448
  • ISBN-13:978-4789725446
内容紹介:
少年時代、誰もが夢想したアドヴェンチャー・ワールドへ
科学者の叔父が遺してくれた鯨型小型潜水艦なるもの。小さな瓶入りのそれを指示通りに飼育していくと、不思議なことに巨大な潜水艇モビー・ディックに成長する。愛猫とともに乗り込み、大海へと旅たつ。ジャングル、宇宙、さらには子どものころの甘い記憶の中へと旅はひろがる。たむらしげるのファンタジーの真骨頂。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2005年05月29日

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