書評

『はたらく浮世絵 大日本物産図会』(青幻舎)

  • 2020/03/20
はたらく浮世絵 大日本物産図会 / 曽田 めぐみ,中村 真菜美,伊藤 謙,明尾 圭造,袴田 舞,樋口 温子
はたらく浮世絵 大日本物産図会
  • 著者:曽田 めぐみ,中村 真菜美,伊藤 謙,明尾 圭造,袴田 舞,樋口 温子
  • 監修:橋爪 節也
  • 出版社:青幻舎
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(256ページ)
  • 発売日:2019-12-19
  • ISBN-10:4861527619
  • ISBN-13:978-4861527616
内容紹介:
大日本物産図会は、明治十(一八七七)年の第一回内国勧業博覧会に出品された錦絵の揃い物です。浮世絵師・三代歌川広重(一八四二~九四年)が絵筆をとり、東京日本橋の錦榮堂萬屋・大倉孫兵衛を版元に刊行されました。日本各地の名産品をテーマに、当時の働く人々の様子をいきいきと描写した全一一八図で知られています。

江戸の産業の活発さとはたらく楽しさを写す

本書は『大日本物産図会』を「はたらく」人々の視点から再構築した読み物である。

『大日本物産図会』は日本各地の名産品をテーマに明治10(1877)年の第1回内国勧業博覧会に出品された錦絵の揃(そろ)いもの。絵師は三代目歌川広重で、118図が確認される。

内国勧業博覧会は、万国博の国内版と理解すればよい。大久保利通の号令のもと、上野公園で開催された。全国の物品を一堂に集めて優劣を比較し、出品者の向上心を刺激した。武蔵とか越中とかの旧国ごとに農産・水産・畜産・商工・興業などの産業を生き生きと伝える『大日本物産図会』は、まさに博覧会に最適の出しものであった。

明治維新期の貴重なデータを提供してくれるこの作品ではあるが、学問的な視点からすると、過度な信用は禁物らしい。三代目広重が各地を訪ねて取材した、という事態は考えにくいためだ。彼が底本として利用した作品は複数確認されている。たとえば本書の「周防国岩蕈採(いわたけとり)之図」の原図は『日本山海名産図会』(1799年初版)の紀州熊野の図だそうだ。年代も場所もまるで違うのである。

だが、そうした難しいことはさておいて、本書は『大日本物産図会』の楽しさを存分に堪能させてくれる。第一章「物産品をばんばん見世(みせ)る」、第二章「和気あいあいとはたらく」、第三章「女性がいきいきはたらく」、第四章「力自慢がどしどし集まる」、第五章「職人技がきらきら輝く」。この巧みな構成のもとに、「はたらく」ことの楽しさ・面白さが誌面からあふれ出てくる。

地方の疲弊とか、働き方の再考が言われる今だからこそ、熟読したい。日本ってこんなに豊かな国だったんだ。「はたらく」って、人が本当に人らしくある振る舞いなんだ。
はたらく浮世絵 大日本物産図会 / 曽田 めぐみ,中村 真菜美,伊藤 謙,明尾 圭造,袴田 舞,樋口 温子
はたらく浮世絵 大日本物産図会
  • 著者:曽田 めぐみ,中村 真菜美,伊藤 謙,明尾 圭造,袴田 舞,樋口 温子
  • 監修:橋爪 節也
  • 出版社:青幻舎
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(256ページ)
  • 発売日:2019-12-19
  • ISBN-10:4861527619
  • ISBN-13:978-4861527616
内容紹介:
大日本物産図会は、明治十(一八七七)年の第一回内国勧業博覧会に出品された錦絵の揃い物です。浮世絵師・三代歌川広重(一八四二~九四年)が絵筆をとり、東京日本橋の錦榮堂萬屋・大倉孫兵衛を版元に刊行されました。日本各地の名産品をテーマに、当時の働く人々の様子をいきいきと描写した全一一八図で知られています。

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初出メディア

サンデー毎日

サンデー毎日 2020年2月16日号

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