書評

『浮世絵 一竿百趣―水辺の風俗誌』(つり人社)

  • 2018/07/26
浮世絵 一竿百趣―水辺の風俗誌 / 金森 直治
浮世絵 一竿百趣―水辺の風俗誌
  • 著者:金森 直治
  • 出版社:つり人社
  • 装丁:単行本(205ページ)
  • ISBN-10:4885365503
  • ISBN-13:978-4885365508
内容紹介:
列僊画注 子英
唐土廿四孝 董永
美勇水滸伝 炎出見命
大日本名将鑑 神功皇后 武内宿弥
和漢百物語 鷺池平九郎
観音霊験記 良弁僧正
義士四十七図 神崎与五郎則休 徒士五両三人扶持行年三十八
浦嶋之子帰国 従龍宮城之図
大樹十五世 八代将軍吉宗公
千代田之御表 浜御成〔ほか〕
「釣り」を描いた浮世絵ばかりが百枚集められた、画集+エッセイ集である。

浮世絵を、さまざまに編集した本は沢山(たくさん)出ているし、北斎や春信、歌麿や写楽というようなビッグネームが、そんな本にはたいがい載っている。

しかし、この画集には、国芳や広重、芳年や清親はあっても、そのほとんどが、初めて見る絵ばかりだ。

著者の金森直治さんは、釣り人で俳人、釣り史研究の資料蒐集(しゅうしゅう)をするうち、「釣りに関する浮世絵」を蒐集した。大概の画面に釣り竿(ざお)が描かれている。

販売目録で浮世絵を購入するときは、小さな写真をルーペで拡大して釣り竿を見つけると注文したそうだ。

一枚一枚の浮世絵の面白さ、もあるけれども、これらの絵のすべてが、釣り好きの金森さんによって蒐(あつ)められた、というのがこの本の味わいである。

一点ずつにつけられたエッセイは、浮世絵の作者や制作年代のみならず、釣り人ならではの視線で「絵」が読まれ、評価されるところがまた面白い。

たとえば、図版の二代・歌川豊国のこの絵は「継ぎ竿」を正確に描いているけれども、背景に磯が描かれて、海の釣りのように見えて、エビがテナガエビというのはどうしたことか? 川釣りなのか、河口か?――それとも絵師が釣りに詳しくなかったのか? という具合。

文末に添えられた俳句も含めて、この本全体に流れているのは、趣味の楽しさ、趣味の豊かさである。この画集を繰る面白さの由(よ)って来るところだろう。
浮世絵 一竿百趣―水辺の風俗誌 / 金森 直治
浮世絵 一竿百趣―水辺の風俗誌
  • 著者:金森 直治
  • 出版社:つり人社
  • 装丁:単行本(205ページ)
  • ISBN-10:4885365503
  • ISBN-13:978-4885365508
内容紹介:
列僊画注 子英
唐土廿四孝 董永
美勇水滸伝 炎出見命
大日本名将鑑 神功皇后 武内宿弥
和漢百物語 鷺池平九郎
観音霊験記 良弁僧正
義士四十七図 神崎与五郎則休 徒士五両三人扶持行年三十八
浦嶋之子帰国 従龍宮城之図
大樹十五世 八代将軍吉宗公
千代田之御表 浜御成〔ほか〕

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2007年1月28日

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