コラム

鴻巣友季子「2017この3冊」毎日新聞|『新しい小説のために』佐々木敦『ペストの記憶』ダニエル・デフォー『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット

  • 2017/12/31

2017 この3冊

〈1〉『新しい小説のために』佐々木敦著(講談社・2916円)

〈2〉『ペストの記憶』ダニエル・デフォー著、武田将明訳(研究社・3780円)

〈3〉『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット著、東辻賢治郎訳(左右社・4860円)


〈1〉日本語小説の「私」の概念を更新する野心的な文学理論書。先行書を攫(さらい)いつつ、人称と視点の考察に紙幅を割く。近年多い「語り」に操作のある小説は、新しいというより回帰的であるとし、「全ての三人称小説は潜在的な一人称小説」と帰結する。翻訳者にも堪(たま)らない一冊。〈2〉ペストの蔓延(まんえん)するロンドンで、病苦に悶絶(もんぜつ)し、逃げ惑い、錯乱し、流離(さすら)う人々の克明な実録。話の筋が途切れたり、忘れた頃に復活したりするいびつで不穏な造りを訳者は、幾度も潜伏しては出現し、街をのみこんでいくペストの性質そのものだと指摘して目から鱗(うろこ)。

〈3〉猿人が直立歩行を始めて数百万年、歩行は思索と想像の原動力、推進力へと変化した。現代はWanderlust。芭蕉の「おくの細道」の英訳でD・キーンがこの単語をあてているのは、「そゞろ神の物につきて」の箇所だ。

新しい小説のために / 佐々木 敦
新しい小説のために
  • 著者:佐々木 敦
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(528ページ)
  • 発売日:2017-10-26
  • ISBN:4062208059
内容紹介:
ゼロ年代以降登場した小説家たちは何を書いているのか? それは本当に新しいのか? 小説における「私」を根源から問い直す試み。

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ペストの記憶  / ダニエル・デフォー
ペストの記憶
  • 著者:ダニエル・デフォー
  • 出版社:研究社
  • 装丁:単行本(364ページ)
  • 発売日:2017-09-22
  • ISBN:432718053X
内容紹介:
★パンデミック——見えない恐怖ロンドンで約10万人の死者を出したペスト大流行の詳細を、当時の公的文書や個人の日記などを基に再現した小説。伝染病の爆発的流行や都市型災害の勃発、その拡大と対策に関する貴重なドキュメントとして、今日も読み継がれている古典である。 群像新人文学賞評論部門を受賞し、文芸批評でも活躍している英文学者による、斬新な視点からの新訳。

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ウォークス 歩くことの精神史 / レベッカ・ソルニット
ウォークス 歩くことの精神史
  • 著者:レベッカ・ソルニット
  • 翻訳:東辻 賢治郎
  • 出版社:左右社
  • 装丁:単行本(520ページ)
  • 発売日:2017-07-07
  • ISBN:486528138X
内容紹介:
広大な人類史のあらゆるジャンルを渉猟し〈歩くこと〉が思考と文化に深く結びつき、創造力の源泉であることを解き明かす歴史的傑作

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2017年12月10日

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