コラム

橋爪大三郎「2017この3冊」毎日新聞|『騎士団長殺し』村上春樹『ゲンロン0 観光客の哲学』東浩紀『欲望論』竹田青嗣

  • 2018/01/04

2017 この3冊

〈1〉『騎士団長殺し 第1部・第2部』村上春樹著(新潮社・1944円)

〈2〉『ゲンロン0 観光客の哲学』東浩紀著(ゲンロン・2484円)

〈3〉『欲望論 第1巻・第2巻』竹田青嗣著(講談社・4320円、4104円)


〈1〉は、芸術の創作それ自体をテーマにしに、自画像的な色彩の濃い長編。フィッツジェラルドを思わせる哀愁と、亡くなった父の影が作品にかげりを与えている。

〈2〉は、東浩紀氏の本格的な哲学的著作。同時代の閉塞(へいそく)と正面から立ち向かう、見事な達成だ。ポストモダンの論者が脆(もろ)くもつまずく理由を突きあて、その先に抜け出そうという意志と戦略はラグビーのようだ。フェイントをかけタックルをかわし、ボールを後ろに投げても前進する。苦悩する若い人びとを勇気づけるに違いない。

〈3〉は、竹田青嗣氏のライフワーク。文芸批評から哲学に舵(かじ)を切り、市民社会の根底に届く本質的な考察を積み重ねてきた。第1巻「『意味』の原理論」は、ギリシャの古典から近代の哲学へと縦走し、カント、ヘーゲル、フッサール、ニーチェ、ハイデガーを解析し尽くして、圧巻である。

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編 / 村上 春樹
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編
  • 著者:村上 春樹
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:単行本(512ページ)
  • 発売日:2017-02-24
  • ISBN:410353432X
内容紹介:
その年の五月から翌年の初めにかけて、私は狭い谷間の入り口近くの、山の上に住んでいた。夏には谷の奥の方でひっきりなしに雨が降ったが、谷の外側はだいたい晴れていた……それは孤独で静謐な日々であるはずだった。騎士団長が顕(あらわ)れるまでは。

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ゲンロン0 観光客の哲学 / 東 浩紀
ゲンロン0 観光客の哲学
  • 著者:東 浩紀
  • 出版社:株式会社ゲンロン
  • 装丁:単行本(326ページ)
  • 発売日:2017-04-08
  • ISBN:490718820X
内容紹介:
否定神学的マルチチュードから郵便的マルチチュードへ――。ナショナリズムが猛威を振るい、グローバリズムが世界を覆う時代、新しい政治思想の足がかりはどこにあるのか。ルソー、ローティ、ネグリ、ドストエフスキー、ネットワーク理論を自在に横断し、ヘーゲルのパラダイムを乗り越える。著者20年の集大成、東思想の新展開を告げる渾身の書き下ろし新著。

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欲望論 第1巻「意味」の原理論 / 竹田 青嗣
欲望論 第1巻「意味」の原理論
  • 著者:竹田 青嗣
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(734ページ)
  • 発売日:2017-10-17
  • ISBN:4062206404
内容紹介:
「欲望が世界を分節する」。21世紀、2500年の哲学の歴史は新たな展開を見せる。哲学の原理論を立て直す画期的論考、待望の登場

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2017年12月17日

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