コラム
橋爪大三郎「2017この3冊」毎日新聞|『騎士団長殺し』村上春樹『ゲンロン0 観光客の哲学』東浩紀『欲望論』竹田青嗣
2017 この3冊
〈1〉『騎士団長殺し 第1部・第2部』村上春樹著(新潮社・1944円)
〈2〉『ゲンロン0 観光客の哲学』東浩紀著(ゲンロン・2484円)
〈3〉『欲望論 第1巻・第2巻』竹田青嗣著(講談社・4320円、4104円)
〈1〉は、芸術の創作それ自体をテーマにしに、自画像的な色彩の濃い長編。フィッツジェラルドを思わせる哀愁と、亡くなった父の影が作品にかげりを与えている。
〈2〉は、東浩紀氏の本格的な哲学的著作。同時代の閉塞(へいそく)と正面から立ち向かう、見事な達成だ。ポストモダンの論者が脆(もろ)くもつまずく理由を突きあて、その先に抜け出そうという意志と戦略はラグビーのようだ。フェイントをかけタックルをかわし、ボールを後ろに投げても前進する。苦悩する若い人びとを勇気づけるに違いない。
〈3〉は、竹田青嗣氏のライフワーク。文芸批評から哲学に舵(かじ)を切り、市民社会の根底に届く本質的な考察を積み重ねてきた。第1巻「『意味』の原理論」は、ギリシャの古典から近代の哲学へと縦走し、カント、ヘーゲル、フッサール、ニーチェ、ハイデガーを解析し尽くして、圧巻である。
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