コラム

橋爪 大三郎が選ぶ「2018 この3冊」森山徹『モノに心はあるのか』(新潮社)、村上篤直『評伝 小室直樹』(ミネルヴァ書房)、松岡由香子『正法眼蔵 第三 仏性』(七つ森書館)

  • 2019/01/08

2018 この3冊

(1)『モノに心はあるのか 動物行動学から考える「世界の仕組み」』森山徹著(新潮選書)

(2)『評伝 小室直樹 上・下』村上篤直著(ミネルヴァ書房)

(3)『正法眼蔵第三 仏性 私釈 成仏以来に具足する法なり』松岡由香子著(七つ森書館)



(1)は、ダンゴムシに「心がある」ことを実証した動物学者による、思索の書物。ふつう心と思われるものの実体を、潜在的な行動プログラムと想定し、生き物はもちろん、石にも心があると言えると説く。

(2)は、8年前に亡くなった政治学者・小室直樹博士の生涯を、丹念な取材と愛あふれる筆致で描いた傑作。逆境にめげない、真摯(しんし)な学問への情熱とたゆみない努力が、「ソビエト崩壊」の奇蹟(きせき)の預言をうんだ。博士の評伝を通じて、戦後を生きた人びとの真実もまた浮かび上がる。

(3)は、道元の難解な主著『正法眼蔵』を完璧に読み解く。緻密なテキスト解釈と論理構成が光る。従来の解釈があらかた誤りで、道元は仏性を実体視することに批判的だったとする。見事な読解だ。ただ正攻法すぎて容赦がない。かえって仏教界から無視されることだろう。残念である。

モノに心はあるのか: 動物行動学から考える「世界の仕組み」 / 森山 徹
モノに心はあるのか: 動物行動学から考える「世界の仕組み」
  • 著者:森山 徹
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:単行本(217ページ)
  • 発売日:2017-12-22
  • ISBN:4106038218
内容紹介:
永年のダンゴムシ研究により、心とは「隠れた活動体」と定義した科学者が、無生物の本質と世界の新しい見方に迫ったユニークな考察。

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評伝 小室直樹:学問と酒と猫を愛した過激な天才 / 村上篤直
評伝 小室直樹:学問と酒と猫を愛した過激な天才
  • 著者:村上篤直
  • 出版社:ミネルヴァ書房
  • 装丁:単行本(768ページ)
  • 発売日:2018-09-18
  • ISBN:4623083845
内容紹介:
上巻では国民学校時代を皮切りに、社会科学の方法論的統合を目指した情熱と憂国。伝説の「小室ゼミ」の誕生から拡大までを描く。

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正法眼蔵第三 仏性 私釈: 成仏以来に具足する法なり / 松岡 由香子
正法眼蔵第三 仏性 私釈: 成仏以来に具足する法なり
  • 著者:松岡 由香子
  • 出版社:七つ森書館
  • 装丁:単行本(493ページ)
  • 発売日:2018-06-05
  • ISBN:4822818950
内容紹介:
道元禅師主著『正法眼蔵』の「仏性」について、伝統的な解釈と現代の諸解釈を吟味して批判。道元が示そうとした真意を探る。

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2018年12月16日

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