コラム

本村 凌二「2018 この3冊」|佐藤優『十五の夏』(幻冬舎)、ジョナサン・ハリス『ビザンツ帝国』(白水社)、ユヴァル・ノア・ハラリ『ホモ・デウス』(河出書房新社)

  • 2019/01/16

2018 この3冊

(1)『十五の夏 上・下』佐藤優著(幻冬舎)

(2)『ビザンツ帝国 生存戦略の一千年』ジョナサン・ハリス著、井上浩一訳(白水社)

(3)『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来 上・下』ユヴァル・ノア・ハラリ著、柴田裕之訳(河出書房新社)



(1)十五歳での東欧・ソ連の独り旅をつづった本書には読者をして自分の人生をふりかえらせる力がある。後の卓越した鋭利な分析家の姿が彷彿(ほうふつ)とする。あらためて自分がほんとうに好きなものは何であるかを問い直してみたくなる。まぎれもなく青春紀行文学の傑作である。

(2)ビザンツ帝国はなぜ崩壊したのかよりも、領土が縮小し国力が弱体化しても、「なぜ存続できたのか」が問題だという。そこには、厳しい逆境にあっても他者をなじませ統合する能力があった。訳者の述懐「こんな本を書きたかった」が印象深い。

(3)これまで人類は飢饉(ききん)、疫病、戦争に悩まされてきた。その克服がほぼ実現したからには、プラスを目指し、不死と至福と神性が目標になる。21世紀、生物工学と情報工学が発達すれば、自由主義も資本主義も民主主義も崩壊の危機にさらされるという。

十五の夏 上 / 佐藤 優
十五の夏 上
  • 著者:佐藤 優
  • 出版社:幻冬舎
  • 装丁:単行本(433ページ)
  • 発売日:2018-03-29
  • ISBN-10:4344032705
  • ISBN-13:978-4344032705
内容紹介:
一九七五年、高1の夏休み。僕はたった一人でソ連・東欧を旅行した。『何でも見てやろう』『深夜特急』につづく旅文学の新たな金字塔。

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ビザンツ帝国 生存戦略の一千年 / ジョナサン・ハリス
ビザンツ帝国 生存戦略の一千年
  • 著者:ジョナサン・ハリス
  • 翻訳:井上 浩一
  • 出版社:白水社
  • 装丁:単行本(380ページ)
  • 発売日:2018-01-20
  • ISBN-10:4560095906
  • ISBN-13:978-4560095904
内容紹介:
外部からの脅威に対して絶えず革新と順応を繰り返しながら、千年にわたり東地中海に栄えた帝国の興亡を、おもな皇帝を軸に語る。

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ホモ・デウス 上: テクノロジーとサピエンスの未来 / ユヴァル・ノア・ハラリ
ホモ・デウス 上: テクノロジーとサピエンスの未来
  • 著者:ユヴァル・ノア・ハラリ
  • 翻訳:柴田 裕之
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:単行本(280ページ)
  • 発売日:2018-09-06
  • ISBN-10:4309227368
  • ISBN-13:978-4309227368
内容紹介:
我々は不死と幸福、神性をめざし、ホモ・デウス(神のヒト)へと自らをアップグレードする。そのとき世界は、あなたはどうなるのか?

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2018年12月16日

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