コラム
沼野 充義「2018 この3冊」|マイケル・エメリック『てんてこまい』(五柳書院)、岡井隆/関口涼子『注解するもの、翻訳するもの』(思潮社)、木村朗子『その後の震災後文学論』(青土社)
2018 この3冊
(1)『てんてこまい 文学は日暮れて道遠し』マイケル・エメリック著(五柳書院)
(2)『注解するもの、翻訳するもの』岡井隆、関口涼子著(思潮社)
(3)『その後の震災後文学論』木村朗子著(青土社)
(1)はアメリカ人の若手日本文学者による文集。翻訳論、能から現代小説まで自由闊達(かったつ)に論じた文学論、そして本職の『源氏物語』研究と、いずれも本人が日本語で書いたもの。ドナルド・キーン以後の新しい日本学の時代の始まりを告げる本だ。
(2)は歌壇の最長老にして第一線の書き手であり続ける岡井隆と、気鋭の詩人関口涼子の間で交わされた往復書簡ならぬ、「往復詩簡」。「注解者」としての岡井に対して、さらにそれを注解し、フランス語に翻訳する関口が見事にかみ合う。詩とは何かという問いが全体に響いている美しい一書。
(3)二〇一一年の大震災からもう七年以上が経(た)ち、被災者の多くはいまだに苦しんでいるのに、為政者はまるでそれが無かったかのように振る舞い始めている。そんな中、忘れてはいけない、と言い張り続けることの大事さをこの本は教えてくれる。
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