コラム
若島 正「2018 この3冊」|ニコルソン・ベイカー『U&I』(白水社)、マーティン・エドワーズ『探偵小説の黄金時代』(国書刊行会)、 デイヴィッド・ベロス『世紀の小説「レ・ミゼラブル」の誕生』(白水社)
2018 この3冊
『U&I』 ニコルソン・ベイカー著、有好宏文訳(白水社)
『探偵小説の黄金時代』 マーティン・エドワーズ著、森英俊・白須清美訳(国書刊行会)
『世紀の小説「レ・ミゼラブル」の誕生』 デイヴィッド・ベロス著、立石光子訳(白水社)
歳(とし)を取ると、虚構よりも事実の方がおもしろくなるものだという話を、よく聞かされてきた。本当かなと思っていたのだが、いざ自分が老人になってみると、たしかにその傾向は感じられる。ここに挙げた三冊もどういうわけか、小説ではなく、小説あるいは小説家について書かれたものばかりが揃(そろ)ってしまった。
『U&I』は、傑作『中二階』と並んで、ニコルソン・ベイカーのベストと呼ぶべき怪作である。ジョン・アップダイクに対する異常な愛情が書かせた本だという以外に言いようがなく、とにかく読んでみることをおすすめするしかない。
『探偵小説の黄金時代』と『世紀の小説「レ・ミゼラブル」の誕生』にも、対象に対する著者の愛着があふれている。それにしても、英国人の事実好きと逸話好き、そして資料の精査ぶりは圧倒的だ。
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