書評

『ぐりとぐら』(福音館書店)

  • 2017/12/29
ぐりとぐら [ぐりとぐらの絵本] / なかがわ りえこ
ぐりとぐら [ぐりとぐらの絵本]
  • 著者:なかがわ りえこ
  • 出版社:福音館書店
  • 装丁:ハードカバー(28ページ)
  • 発売日:1967-01-20
  • ISBN-10:4834000826
  • ISBN-13:978-4834000825
内容紹介:
お料理することと食べることが何より好きな野ねずみのぐりとぐらは、森で大きな卵を見つけました。目玉焼きにしようか卵焼きにしようか考えたすえ、カステラを作ることにしました。でも、卵があまり大きくて運べません。そこでフライパンをもってきて、その場で料理することにしました。カステラを焼くにおいにつられて、森じゅうの動物たちも集まってきます……。みんなの人気者ぐりとぐらは、この絵本で登場しました。

ときには、アレンジ

息子の二歳健診に行ったときのこと。待合室に『ぐりとぐら』が置いてあった。

「わあ、なつかしい!」と手にとったが、そのまま読んでやるには、ちょっとむずかしい。私も確か、幼稚園に行くようになってから読んだ記憶がある。それでも、かわいらしい絵にひかれて「これ、これ」と子どもがせがむので、読みはじめた。

文章が長めのところは、適当にはしょって、絵を見ることを中心にページをめくる。

「ぐりとぐらは、どんぐりをひろったよ。きのこもおいしそうだね~」

「わあ、おおきいたまご! これでカステラをつくることにしたんだって」

そんなふうにしていると、近くにいたママ友が、のぞきこんで言った。

「へーっ、それでいいんだあ。そんなふうにして読むのかあ。私、絵本って一字一句、違えずに読まなきゃいけないのかと思ってた。なるほどねえ」

もちろん、理解できる年齢になれば(そして、これほどの名作ならば特に)、原文どおりに読んだほうが、いいだろう。絵本は、繰り返し読むものだから、耳に残る音は、毎回同じほうがいいとも思う。

「まあ、これは非常手段だけど……でも、せっかく興味を示しているのに、まだむずかしいからダメっていうよりは、いいかなあと思ってね」。私は、そんなふうに答えた。

こういう場合以外にも、「この言い回しはむずかしいな」とか「この言葉はまだ知らないよね」という時には、適当に言いかえて読む。「ウチはおかあさんって呼んでるから、ママじゃなくておかあさんで読もう」とか、そういうこともある。原文を尊重しつつも、状況に応じてアレンジできるのは、生身の人間が読んでいるからこそ、のことだ。

ただ、私は、そのアレンジをしすぎる傾向があるようで、最近は子どもから、たしなめられてしまうこともある。

「おいしい! なんておいしいの! ぞうさんはむしゃむしゃ、かめさんはもぐもぐ、かたつむりさんもくにゅくにゅ、かにさんは、えーっと……カミカミ!」などと調子に乗って読んでいると、じーつと疑いのまなざしを向けてくる。

「それ、どこにかいてあるの?」

「えっ、いやその、そこまでは書いてないけど、ホラ、絵を見てたらなんか楽しくなってきちゃって……」

「ちゃんと、よんで!」

時には、ちゃんと読んでいるのに「いまの、かいてある?」と聞かれることもある。そういうときは「め、を、ま、る、く、し、て」と、平仮名を指でおさえて「ほらね、書いてあるよ」と釈明する。そのせいか、このごろ息子は、字を読むことに興味を持ちだした。勝手におかあさんが創作していないかどうか、チェックしたいらしい。

【この書評が収録されている書籍】
かーかん、はあい 子どもと本と私 / 俵万智
かーかん、はあい 子どもと本と私
  • 著者:俵万智
  • 出版社:朝日新聞出版
  • 装丁:文庫(224ページ)
  • 発売日:2012-05-08
  • ISBN-10:4022646667
  • ISBN-13:978-4022646668
内容紹介:
6歳になった今も、息子は絵本を持って母のもとへやってくる――。子育てをする歌人が、子どものために選び、自身も心を揺り動かされた絵本48冊を紹介したエッセイ。母親世代にも懐かしい不朽の名作から、図鑑、ことば遊び、シュールなものまで、幅広く選んでいる。成長に応じた絵本探しの参考として、また母と子のあたたかな交流を描いた本として楽しい一冊。単行本全2巻を1冊にまとめて文庫化。

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ぐりとぐら [ぐりとぐらの絵本] / なかがわ りえこ
ぐりとぐら [ぐりとぐらの絵本]
  • 著者:なかがわ りえこ
  • 出版社:福音館書店
  • 装丁:ハードカバー(28ページ)
  • 発売日:1967-01-20
  • ISBN-10:4834000826
  • ISBN-13:978-4834000825
内容紹介:
お料理することと食べることが何より好きな野ねずみのぐりとぐらは、森で大きな卵を見つけました。目玉焼きにしようか卵焼きにしようか考えたすえ、カステラを作ることにしました。でも、卵があまり大きくて運べません。そこでフライパンをもってきて、その場で料理することにしました。カステラを焼くにおいにつられて、森じゅうの動物たちも集まってきます……。みんなの人気者ぐりとぐらは、この絵本で登場しました。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2006年10月25日

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