前書き

『パナソニック、「イノベーション量産」企業に進化する!』(PHP研究所)

  • 2018/10/20
パナソニック、「イノベーション量産」企業に進化する! / 片山 修
パナソニック、「イノベーション量産」企業に進化する!
  • 著者:片山 修
  • 出版社:PHP研究所
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(257ページ)
  • 発売日:2018-10-20
  • ISBN-10:4569841821
  • ISBN-13:978-4569841823
内容紹介:
テスラへの電池供給、ローソンのレジロボ、「ヨコパナ」プロジェクト……イノベーション企業への脱皮を図る家電の雄の挑戦を活写する。

まえがき

その日の記者会見は、衝撃だった――。

スキンヘッドの男性が、壇上に着席していた。異様な光景である。その男性からは、横文字がバンバン飛び出した。

「えッ、これって、ソニーの記者会見じゃないよね」と、思わず疑ったほどだ。

パナソニックの記者会見といえば、昔から、極めて落ち着いた印象だった。出席者は、ダークスーツにネクタイ姿。地味だった。いかにも、日本企業の役員そのものだった。

そこに、まったく正反対ともいうべき若いスキンヘッドの人物がスカウトされ、経営チームに加わった。会見の雰囲気は一変した。

「ああ、パナソニックは、ここまで変わったのか」と、感じさせるシーンだった。

「40歳の若造が、スキンヘッドに日ごろはTシャツ、Gパンで、あたかもパナソニックを代表するかのように、そして、さもわかったようなことをいう。以前のパナソニックなら〝お咎めもん〟。あんなの絶対に〝ペケ〟でしたからね」

彼、すなわちビジネスイノベーション本部本部長の馬場渉について、パナソニック代表取締役社長CEO(最高経営責任者)の津賀一宏はそう語った。

津賀の行った経営革新についての詳細は本文に譲るが、本社の縮小、ガバナンス強化に加え、カンパニー制導入や事業部制復活など、矢継ぎ早に改革に取り組んだ。また、プラズマテレビの撤退など事業の整理を進め、従来前面に出していた家電事業のB2C(対消費者)から、車載や住宅事業を中心とするB2B(対法人)へと、全社の事業の方向性を大きく転換した。大量生産大量販売で成立していた、高度成長期のビジネスモデルからの脱却である。

津賀はまた、2013年に経営ビジョンとして「クロスバリューイノベーション」を掲げた。17年には、本社研究部門を再編し、「イノベーション推進部門」を設置。イノベーション創出に全社をあげて戦略的に取り組む体制を構築した。馬場は、その中心的人物として招かれた。

また、機能別の縦割組織では、イノベーションは起こせない。柔軟性を欠いたガチガチの組織は、社員の活力を奪うばかりか、イノベーターの育成もできないし、オープンイノベーションもうまく運ばない。

津賀は、社員のマインド改革の一環として、企業文化や組織風土の改革を進めた。服装を自由裁量とし、一部のオフィスではフリーアドレスを導入。在宅勤務の手続きを簡素化し、社内の別の部署の仕事を掛け持ちする「社内複業」や、パナソニックに籍を置いたまま他社で働く「社外留職」など働き方の多様化も促した。イノベーションを生み出すための小さな組織をいくつも設けた。そして、社内カンパニー、あるいは事業部、海外現地法人など、できる限り現場に権限を委譲した。外部から優秀な役員やイノベーション人材を呼び込み、変化の追い風にした。

このほか、M&Aや提携にも積極的に取り組んだ。「自前主義」が美徳とされてきた企業風土から脱却し、オープンな姿勢を前面に打ち出し、「知の探究」と「実践知」を積み重ねている。

本書は、創業100年を迎えたパナソニックが悪弊を断ち切り、「イノベーション量産」企業へと生まれ変わるストーリーである。パナソニックは、いま、すべてを一から変える決意で、改革の道を懸命に歩み出した。失敗もある。しかし、失敗を重ねてこそ、成功も増えていく。日本人的な生真面目さで改革に愚直に取り組む――。

パナソニックの津賀をリーダーとする変革のストーリーは、日本企業に知恵と勇気をもたらすだろう。
パナソニック、「イノベーション量産」企業に進化する! / 片山 修
パナソニック、「イノベーション量産」企業に進化する!
  • 著者:片山 修
  • 出版社:PHP研究所
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(257ページ)
  • 発売日:2018-10-20
  • ISBN-10:4569841821
  • ISBN-13:978-4569841823
内容紹介:
テスラへの電池供給、ローソンのレジロボ、「ヨコパナ」プロジェクト……イノベーション企業への脱皮を図る家電の雄の挑戦を活写する。

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