≪習近平は…こう警告した。「米国は…中国の平和的な統一を支持すべきだ」≫。二三年十一月の米中首脳会談でのこと。不意を突かれたアメリカ側は反応できなかった。
「平和的な統一」は台湾を封鎖し交渉の場に引きずり出す「新型統一戦争」のこと。戦火を交えない巧妙な作戦だ。アメリカも日本もこの新しいシナリオの研究が足りない。
著者は習近平政権の最新動向を読み解き、この作戦はいつ発動されてもおかしくないとみる。著者の描く≪「台湾併合」極秘シナリオ≫は衝撃的。トランプ再登板→中国が「国家統一法」を制定→海上臨検で台湾の物流遮断→「人道回廊」の見返りに「統一協議」を要求、の段取りだ。
軍事衝突になる場合も、日本は態勢が整っていない。ミサイル攻撃で戦闘機も基地も壊滅。交通が混乱し、自衛隊の南西方面への移動も国民の保護や避難も、遺体の火葬すらままならないだろう。自治体は危機意識が薄く訓練をしていないのだ。
本書を貫くのはリアリズム。「台湾有事」を煽るのでも中国の軍事力をみくびるのでもなく、正しく恐れよう。きちんと情報を分析し議論を深めよう。これこそ正攻法だ。