書評

『本当の武士道とは何か 日本人の理想と倫理』(PHP研究所)

  • 2020/07/19
本当の武士道とは何か 日本人の理想と倫理 / 菅野 覚明
本当の武士道とは何か 日本人の理想と倫理
  • 著者:菅野 覚明
  • 出版社:PHP研究所
  • 装丁:新書(224ページ)
  • 発売日:2019-12-14
  • ISBN-10:4569845614
  • ISBN-13:978-4569845616
内容紹介:
「武士道論」の大半は明治期以降の軍人が喧伝したもの。血まみれの現場を生き抜いた武士たちが形成した真の「戦闘者の心得」とは?

命を賭して戦う男たちが現場で生みだした思想

口舌の徒は信用できない、という感覚をかつての武人は持っていた。織田信長は若手をまず実戦に投入した。卓越した知力を有していても、襲ってくる敵に対処できなければものの役には立たない。将来を嘱望された万見仙千代(森蘭丸の前任者)は、無名の戦いで死んだ。反対に、初陣で首級をあげた蒲生氏郷は娘を与えられた。

時代がくだり西郷隆盛は、外交にも経済にも通じた大隈重信を評価しなかった。幕末の血なまぐさい争いに参加しない、エリートだったから。逆に、どう見ても能吏型ではない山縣有朋は重んじた。死線をくぐり抜けた、叩(たた)き上げだったから。

実戦を生き抜く。それは並大抵の営為ではない。敵と向き合ったときに、少しでも脅えたり慌てれば命はない。「常在戦場」の精神のもと、いつも死と向き合い、腹を決めねば一歩も先に進めない。そうした覚悟を定めた「戦う男たち」は、やがて「現場の感覚から生まれた思想」を形成していった。それこそが本物の武士道であり、本書はそのありようを、実例を挙げながら、わかりやすく説き明かす。

中世史を学ぶ私は、武士とは「戦う人」であるとともに「統治する人」だと学習している。武士道が意識された江戸時代、武士は自分の家を守るだけでなく、農民や町人の生活にも責任を持っていたはずだ。では武士道は統治とはどう関わるのか。そこをぜひ知りたいが、ないものねだりというべきか。

私と解釈や意見が違うところは多々あるけれど、叙述に迫力があり、ぐいぐいと引き込まれる。それは戦う武士の高潔さを説く著者自身が、まずは誇り高い研究者だからにほかなるまい。実利を得ることだけが称賛される今、本当の生き方とは何かを力強く訴える本である。
本当の武士道とは何か 日本人の理想と倫理 / 菅野 覚明
本当の武士道とは何か 日本人の理想と倫理
  • 著者:菅野 覚明
  • 出版社:PHP研究所
  • 装丁:新書(224ページ)
  • 発売日:2019-12-14
  • ISBN-10:4569845614
  • ISBN-13:978-4569845616
内容紹介:
「武士道論」の大半は明治期以降の軍人が喧伝したもの。血まみれの現場を生き抜いた武士たちが形成した真の「戦闘者の心得」とは?

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