書評

『時のながめ』(新潮社)

  • 2024/11/16
時のながめ / 高井 有一
時のながめ
  • 著者:高井 有一
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:単行本(221ページ)
  • 発売日:2015-10-30
  • ISBN-10:4103116064
  • ISBN-13:978-4103116066
内容紹介:
海恋ひ 海辺の土地 北の桜 物語のうちそと ある展墓 老いをめぐつて 白寿の雪 まぼろしの土地 人権よりもつと大事なもの 荒れた夏のあとに 里山の木陰にて ささやかな体験の中から 自裁した母… もっと読む
海恋ひ 海辺の土地 北の桜 物語のうちそと ある展墓 老いをめぐつて 白寿の雪 まぼろしの土地 人権よりもつと大事なもの 荒れた夏のあとに 里山の木陰にて ささやかな体験の中から 自裁した母、尼になつた叔母 昭和のあとの十五年 しみじみと思ふ戦争 六十年目の夏に 戦場の生死 晴れた日の展墓 心身ともに頑健な生活人 後藤明生に先立たれて 母の時間 ひたすらに書き続けた一生 生真面目な顔、忘れられず 記憶のなかの岡松和夫 石ころと天才の間 今の家むかしの庭 晩年の幸福 郷里の町の人と風景 流れの中の言葉 月が呼ぶ夢 病 大文字山登り 先立つ人を送る

戦争への深い後悔底に

高井有一のエッセイ集。高井の小説は少なからず読んできたが、エッセイ集を読むのは初めてだった。エッセイ一つひとつがとても短い。だが、その中に、長い間文章を書いてきた人間にしかできない落ち着いた呼吸が感じられる。二十年以上も前の書き物も混じっている。

にもかかわらず、一貫している。そんな印象だ。書いてあることも対象もバラバラなのに、戦争(ほぼすべてが太平洋戦争)への深い後悔と、亡くなった文人を哀惜する感情が、文章の底に流れている。

たとえば、「戦争は悪だ」と短歌に詠み込んだ宮柊二に対し、「単純な表現だが」いまそれを言わなくなったら、「宮柊二を裏切る事になる」と書く。胸に刻みたい。


時のながめ / 高井 有一
時のながめ
  • 著者:高井 有一
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:単行本(221ページ)
  • 発売日:2015-10-30
  • ISBN-10:4103116064
  • ISBN-13:978-4103116066
内容紹介:
海恋ひ 海辺の土地 北の桜 物語のうちそと ある展墓 老いをめぐつて 白寿の雪 まぼろしの土地 人権よりもつと大事なもの 荒れた夏のあとに 里山の木陰にて ささやかな体験の中から 自裁した母… もっと読む
海恋ひ 海辺の土地 北の桜 物語のうちそと ある展墓 老いをめぐつて 白寿の雪 まぼろしの土地 人権よりもつと大事なもの 荒れた夏のあとに 里山の木陰にて ささやかな体験の中から 自裁した母、尼になつた叔母 昭和のあとの十五年 しみじみと思ふ戦争 六十年目の夏に 戦場の生死 晴れた日の展墓 心身ともに頑健な生活人 後藤明生に先立たれて 母の時間 ひたすらに書き続けた一生 生真面目な顔、忘れられず 記憶のなかの岡松和夫 石ころと天才の間 今の家むかしの庭 晩年の幸福 郷里の町の人と風景 流れの中の言葉 月が呼ぶ夢 病 大文字山登り 先立つ人を送る

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初出メディア

日本経済新聞

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